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初めての味―2―
「……………」
正面でマーニャさんが期待のこもったキラキラした目が輝いている。
そして俺の手の中にはマーニャさんの作ったスープ。
ホカホカ湯気をたてるスープは冷えた俺の体には嬉しいが、如何せん具材が宜しくない。
レッドキャスクベアー……先刻俺をかじってくれた獣だ。
熊……と、思えば食べれない事はないかもだが。
自分を食べかけた奴だ。
もしかしたら俺の肉も少しは食べてるかもしれないのに……。
マーニャさんは「サクラ様を襲うなんて不届きもの解体のしがいがありました。噛み締めてやってください!」と笑顔で返された。
恐いよ、この人。
ちなみに食器も全部マーニャさんが木で作り、鍋も石を加工して作ったそうだ。
チート感半端ないな。
リヒトを追いかけてる間にこれだけの事をやったのかと思ったけど、俺が気を失ってる間らしい……水汲みに……って熊捌いてたのか……。
起きがけには知りたくない情報だ、リナーシア様ありがとう。
現実から目を背けて見たけど、状況は変わらない。
みんな俺が食べるのを待っているのか、食べずにこちらを見ている。
お腹は空いているよ。
だがしかし、自分を食べたかもしれない獣。
うんうんと唸っていると、ユミルさんに呼ばれ、振り向き様に口にスプーンを押し込まれた。
「んぐっ!!」
もぐもぐ………ごくん。
「…美味しい」
パアァッとマーニャさんが笑顔になる。
もっと臭いかと思ったけど、臭いもクセもなくて、しっかり煮込まれてホロホロと柔らかい。調味料が無くて……すみませんと謝られたけど、そんな事ない美味しい。
「マーニャがいてくれるから食べ物には不自由しなさそうだな」
「当たり前です!!私がいる限り、サクラ様にひもじい思いなんてさせませんから!!」
ははっ……頼もしい限りだね。
「ありがとう、マーニャ。ユミルと二人の時は蛇や鳥を魔法で焼いて食べるだけだったからな。久々に美味しいモノを食べたよ」
皆に誉められマーニャさんはご満悦だ。
……ユミルさんはまぁわかるけど、リヒトは物腰の柔らかい草食系な感じがするのに、意外にワイルドなんだね……。
「王子様って言うから焼いただけの獣の肉なんて食べれるかって感じかと思った」
「生きる為なら何でもしますよ。はい、あーん」
リヒトがスプーンを向けてくる。
「……………はいっ?」
「ユミルはよくて、私は駄目ですか?」
やんわりと言ってくるけど、上司の『俺の酒が飲めんのか』状態ですよね?
断れないヤツですよね?
皆の視線が刺さるのを感じながら。
覚悟を決め、目をつぶって思いきって口を開いた。
「美味しいですか?」
「………美味しいです……」
正直、味なんてもうわかんねぇよ!
マーニャさんの悲鳴なんて無視だ!無視!!
「ははっ。すっかり仲良くなったようだな。じゃあ場も和んだところで話の続きをしようか」
和んでないしっ!!心の中でツッコミをいれながら、ユミルさんの話に耳を傾けた。
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