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さよなら―1―

これからの事は、明日また話そうと言うことになった。 ユミルさんが入口に防御壁を張って、マーニャさんに洗浄魔法をかけてもらって……体がさっぱりしたところで、おやすみなさいといくところなんだけど……。 「お兄様と寝るより、断然安全です!!」 「リナーシアは女同士マーニャと寝るべきだ!」 俺の左腕はリナーシア様、右腕はリヒトに掴まれて、兄妹喧嘩に挟まれている。 そもそもの発端は、リナーシア様から 『サクラ様、今日はご一緒に寝ていただいてもよろしいでしょうか?』 という、とても鼻血モノなお願いをされた事なんだけど……リヒトの反対にあい、今に至る。 こういう時、マーニャさんは傍観者を決め込み、ニコニコしているだけなので、ユミルさんに視線を送って助けを求めた。 頑張れ!!といい笑顔で返された。 くっそぉ!巻き込んでやる!! 「俺は、ユミルさんと寝る!!ユミルさんが良い!!」 二人の腕を振り払って、ユミルさんに抱きついた。 焦ってる、焦ってる。 いい気味だ。 ……………………………………………。 何故こうなった……………。 左から、 ユミルさん、リヒト、俺、リナーシア様、マーニャさん。 川の字……大河になって寝ている。 ユミルさんが慌てているのを見てほくそえんでいた俺に、マーニャさんが『それでは皆で寝ましょう!』とそれはそれは、良い笑顔で宣った。 お断りしようと思ったけど『……眠るリナーシア様の横で、バレないように絡み合う舌が……その横で嫉妬燃えるユミル様…』ぶつぶつ呟きながらトリップしているマーニャさんは怖かったので、従うことにした。 そして、用意された寝床に鎮座していたのがコイツだ。 お馴染みレッドキャスクベアー……の毛皮。夢見悪そ……。 毛皮って狩って直ぐに使えるもの? 臭そうだけど……。 マーニャさんの洗浄魔法とリヒトの風魔法で一瞬ですって。 ハイスペック過ぎるだろう。 ふかふかの葉っぱベッドの上に毛皮が洞窟とは思えない眠り心地を実現してくれます。 リヒトは自分のマント、リナーシア様はユミルさんのマントを敷いている。 ユミルさんのマントで良いと言ったが、俺には貸してくれなかった。 横を向けば、リナーシア様とリヒトの美しい寝顔。 背中にはレッドキャスクベアーの毛皮。 強力なトライアングルに囲まれて、俺はなんとも寝苦しい夜を過ごす事となった。 そういえば、ユミルさんから 『リナーシアは世界樹の気配に敏感だからな……今日は一緒に寝てやれ』って言われたけど……あれはどういう意味だったんだろう……。

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