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さよなら―2―
桜の花びらが舞っている……。
『ありがとう。私の子供達を助けてくれて』
長い黒髪の着物を着たお姫様。
春姫様……?
『私が弱いせいで、あの子達を苦しめ続けてしまった』
春姫様は弱くない。
ずっと昔からリヒト達を見守り続けていたんでしょう?
ユミルさんもリヒトもリナーシア様も……皆、春姫様を愛してるよ。
苦しんでなんかないよ?
『私が消えれば、全て終わりになるのでしょうが、私が消えた後、今目の前にいる子達はどんな目にあわされるのかを思うと、自分で終わらせる勇気が出ませんでした。もう何百年とたつのにあの子達の面影を重ねてしまう……』
そんな風に愛されていたんだってリヒト達は喜ぶよ。
『あの子達を心配させたくなくて取り繕ってきましたがもう私には再生する力もなかった。前王は助けてあげられなかったけれど、あの子達はあの鳥籠から飛び立てました。あなたが来てくれて本当に良かった』
俺は何も……世界樹様と桜の木の力だし……。
『私だけではあの力は使えなかった。あなたがあの子達を彼処から出してあげたいという気持ちに力が応えたのです』
春姫様の後ろに桜の木が現れた。
《悠壱……ごめんなさいね。あなたに辛い役目を背をわせてしまって……育てた力の種だけを送るつもりだったのですが……あなたまで異世界に巻き込んでしまったの》
力の種って、頭の木?何で俺が……?
《恐らくは……傷ついたあなたを癒すためだったのでしょう……使者があなたに世界樹の花を食べさせたのを覚えていて?》
使者ってユミルさん?
……何となく……あれは世界樹の花だったんですね。
《きっと力の種が確実に世界樹の元へ渡ろうと、あなたの中にある世界樹の力を使ったのかもしれません。巻き込んでしまって、本当にごめんなさい》
『ユミルを恨まないであげて……あの子あなたを助けたかっただけなの……』
わかっています。
ユミルさんには感謝こそすれ恨むなんて……。
あの……俺はそっちには戻れないの?
《世界樹にも私にももう、その力はないの。あなたが望み、力の種が応えれば、もしかしたら……》
………………………。
『あなたには迷惑をかけてごめんなさい。勝手なお願いだけれど、どうかあの子達を幸せに導いてあげてほしいのです』
……俺になにが出来るかわかりませんが……やれることはやってみます。
『本当にありがとう……あの子達に最期まで元気な姿を見せ続ける事が出来て良かった………さようなら悠壱さん、来てくれたのがあなたで良かった………』
《悠壱……いつまでも……あなたの幸せを願っています……》
目の前が見えなくなるほどの桜吹雪に思わず目を瞑ってしまった。
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