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さよなら―3―

「…………………」 目が覚めたとき、気付かないうちに涙を流していたらしい。 まだ皆、眠っている。 起こさないように抜け出して、洞窟の入口へ向かった。 防御壁、見えないけど術者以外通れないらしいから入口の岩に腰をおろした。 外を見るとも無しに眺める。 雨はいつの間にかあがっていた。 しかし月明かりは届かないので、真っ暗だ。 「………さよなら?」 独り言に応えるように桜色に光るモノが舞い降りた。 「そっか……逝くのか……」 光は一つ、二つ、三つ………と増えてゆき。 辺りを桜色に照らした。 「………………」 『幸せにしてあげて』 ……本当に勝手なお願いだ。 けれど……消え行く彼女には……いままで戦い続けていた彼女には、せめて憂いなく逝って欲しい。 「お体を冷やしますよ」 いつの間にかリヒトが隣に立っていて、マントをかけてくれた。 「ありがとう」 「世界樹様は逝ってしまうのですね」 静寂の中の静かに舞う光を二人で見ていた。 「綺麗な色ですね」 「……桜色……だね。桜の花の色」 「桜色……サクラの色ですね。だから綺麗なんですね」 字は違うけどね……。 「リヒトは泣かないの?寂しくない?好きだったんでしょ?」 リナーシア様は……泣いちゃうだろうな。 「好きでしたよ。でも世界樹様がこれで自由になるのなら喜ぶべきでしょうね」 「リヒトは……強いね」 「……強がっているだけですよ……サクラ、泣かないで……」 「泣いてな……」 慰めるかのようなリヒトの優しいキス。 今は甘えても良いだろうか?隣に立つ体に凭れ掛かった。 頭を撫でてくれるリヒトの手は温かくて……。 ガシャーンッ!! 突然、何かが崩れ落ちるような音が洞窟内に響き渡った。

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