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萌ゆる森―1―

「申し訳ありません!!」 俺がいるのは、いつぞやの岩陰。 岩越しにマーニャさんが頭を下げてくる。 先程の音はマーニャさんが積み上げていた食器類に倒れ込んだ音でした。 皆さん勢揃いしておりました。 羞恥のあまり世界樹様とのお別れの場を皆さんにお譲りして、ここに引き込もっている次第です。 「私、まさか1日目にして生キスシーンを拝見させていただけるとは夢にも思わず!嬉しさのあまり気を失ってしまいました!」 謝る気ねぇだろっ!! そうだよ! 出会ってまだ、1日も経ってないのに2回も雰囲気に流されてしまった!! あの草食の皮を被った肉食王子め! 世界樹とお別れというシリアスシーンもぶっ飛んださ!!もう絶対ながされないからな! ―――――――――――――――――――――――― マーニャさんのあれは、病気みたいなもんだから許してやれとユミルさんに諭されて、ついた食卓。 朝食は昨夜と同じ、レッドキャスクベアー汁でございます。 朝からハードル高いなぁ……。 食材ないから我儘言ってる場合じゃないのはわかるんだけどさ……。 肉の保存状態は大丈夫なのか気になるところだけど、リヒトが土魔法で穴を開けて作った地下室に、氷魔法を使って冷蔵庫を作ってくれたそうだ。 飲み水も魔法で出してくれているので、一家に一台欲しいね。 エロ王子だけど。 よし。 よそ事を考えてる間に完食! リヒトが残念そうな目で見てくるけど知ったことか。 その視線を無視してユミルさんに目を向ける。 「ユミルさん、今日……と、いうよりこれから先の事どうする?」 「そうだな……雨風を凌ぐ場所はあるし、飲み水も確保出来ている。後は食料か……」 そうだよね、この熊肉だっていつまでもつかわからないしね。 「私は、調味料になるものがあると助かるのですが……」 ……そうだね、美味しいに越したことはないか。 「布が作れれば……洗浄魔法で綺麗になっているとはいえ、服を何とかしたいです。サクラ様の服も穴があいたままですから」 ……そうだね?心配してくれてありがとう。 でも地上に出れば服ぐらい。 「そうだな、家財道具も揃えたいな……いつまでも葉っぱのベッドは正直辛いからな…」 「ちょっと待って!みんなここに定住しようとしてない?谷からでる方法じゃないの?」 みんなきょとんとこちらを見ている。 何でそんな『ここ出る必要ある?』見たいな顔してんの? ここ死の谷でしょう? こんな恵みの少なそうな場所でサバイバル生活続ける意味なくない? 「世界樹がなくなって、加護とかなくなったんでしょう?教会はともかく国民の人とか心配じゃないの?」 「サクラと暮らすここは天国のようです……我々は国を追われた身ですから、地上にでたところで帰るところもありませんから。それに加護がなくなったからと言ってすぐに何かが起こるわけではありませんし、民も弱くはありません」 そうなの? 俺は平和な場所に住みたいけどなぁ……。 「天国かは知らんが住み心地は悪くないぞ?楽しいしな。とりあえず食べられそうな獣を狩りつつ、使えそうな物を探してこよう。ユーイチは何か必要な物はないか?」 「俺?う~ん……食べられる野菜とか果物とかあれば嬉しいかな?肉だけってちょっと……」 さすが『死の谷』と呼ばれるだけあって、色彩が全体的にグレーがかってるんだよな……昨日少し歩いただけだけど、木の実すら見かけなかった。 期待はできなそうだよなぁ。 リヒトがいきなり手を握ってきた。 「必ずや見つけて参ります!見つけるまでは戻りません!!」 そう言うなり飛び出していった。 「ユーイチが無視するから、何とか挽回しようと必死だな」 ユミルさんはカラカラと笑った。

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