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萌ゆる森―6―

「サクラさんから頂いた鑑定の力で、人のステータスも読めるようになったのですが、サクラさんのステータスにおかしな点がありました。【サクラ ユウイチ 30歳(12)】となっていまして、読んでいくと、どうやらサクラさんは体だけ12歳まで遡っているようなのです。理由まではわかりませんが……」 12歳……リナは理由はわからないと言ったが、本当はわかっているんだろうな。 チラリとユミルさんを見てたから。 世界樹の花。 ユミルさんと関わりのあった歳。 無関係ではないんだろう。 しかし……鏡もないし、全く気が付かなかった。 この世界の人は皆大きいなぁ。 くらいにしか思ってなかった。 皆が俺の歳を聞いてびっくりしたのも当然か。 深く考えないのは俺の悪い癖だ。 「どおりで、全然変わらない筈だ。ユーイチに20年経ったと聞いてまさかと思ってはいたが……」 「12歳の体かぁ……」 ますます役に立たないな……。 「12歳…12歳…15歳で成人だから、あと3年……いや、精神的には30だから……この場合はどうなんだ?」 「リヒト…?大丈夫?」 リヒトはぶつぶつと呟きながら、唸っていて。 それを見てリナは楽しそうに微笑んで、ユミルさんは楽しそうにリヒトの背中を叩いた。 「まぁ、一番大事なのは本人たちの気持ちだわな。リヒト!無理強いはするなよ?」 無理強いって何する気!? 関わるとやぶ蛇になりそうなので、話題を変えよう。 「ねぇ、リナ。この頭の上の木って名前何て書いてある?」 「え?名前ですか?」 「うん。なんて呼んで良いかわかんないし、頭の上の木ってとこ呼び辛い」 リナは木をじっと見つめる。 「【力の種】と、書かれておりますね」 「これだけ成長しててまだ種なんだ。力の種か~」 なんか思ってたのと違う。 もっと名前っぽい……呼びやすいのを期待していたんだけど。 「サクラさんがお名前をつけて差し上げてはいかがですか?」 「俺が?良いのかな?」 肯定するように、サワサワと葉が揺れる。 ネーミングセンスないんだけど……ネットで名付けサイトも見れないし、少ない知識を総動員させる。 ………………あ~無理だ。 何も出てこない。 「う~ん、草木が芽吹く……萌える……『(もゆる)』は?」 それでいいと言うように、またサワサワと葉を鳴らす。 「良かったですね。モユル様」 なんか仲間……家族が増えたみたいで、俺も嬉しかった。 モユルが大きくふるえたと思ったら……。 足元から風がまき上がった。 ザアァァ――――と風が流れていくと共に荒れ果ていた地に草花が芽を出して、洞窟の前の広場が草原のように新緑色に染まった。 「え……?」 「すごい……モユル様も名前を貰って喜んでいるようですわ。嬉しそうな声が聞こえてきます」 リナが耳に手を当ててモユルの声を聞き取っている。 「何て?」 「『ありがとう……ママ……ママ大好き』と言っております。名前を貰って……人格ができたのでしょうか?」 ………聞くんじゃなかったな。 「ユーイチの力か?これは……スゴいな」 「大地が生命力に溢れて……さすがですサクラ」 ユミルさんとリヒトがすごいすごいと頭を撫でていく。 「いや……俺じゃなくて……」 「ママがサクラ様ならパパは誰なんでしょうね?」 マーニャさんの言葉にみんな固まってしまった。 「精神的にはユミル様、肉体的にはリヒト様かしら〜」 最早、心の声を隠そうともせず、口に出してはしゃぐマーニャさんに殺意が湧いた。

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