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実る愛―2―

今日は朝からリヒトとユミルさんは二人でヴィブモースの繭玉を採集に向かった。 昨日発見したらしいが、大き過ぎて持って帰ってこれなかったらしい。 二人の仲は気にしてたけど、変わらない様に見える。 長い付き合いで、お互いの事を良く知っているからだろうか? 俺はというと、ユミルさんに言われた事が気になってリヒトの顔が見れずにいた。 昨日リヒトに避けられていた時の気持ちを思い出し『自分がやられて嫌な事は、人にしてはいけません』の教えの元、頑張って話しかけるけど……声をかけておいて顔を見ると逃げ出すという、却って失礼な事を繰り返した。 リヒト怒ってるかな……? 帰ってきたらちゃんと逃げずに謝ろう。 そしてあの疑問を確かめるのだ。 ――――――――――――――――――― 「でかっ!!」 二人が持ち帰ったヴィブモースの繭玉は俺の想像を遥かに凌駕していた。 このトラック大の繭玉から出てきた主の姿を想像したら悪寒が走る。 「これでサクラの洋服も寝具も整える事が出来ます。寝苦しい思いをさせて申し訳ありませんでした」 「いやいや…俺レッドキャスクベアーいるし快適だよ?俺じゃなくて女の子だし、リナの物を作ってあげようよ」 「マーニャ、いけるかい?」 華麗にスルーされた。 みんなで糸を紡ぐ為の道具や手順を話し合っている姿を尻目に、あの計画を実行せねば……俺は一人、勇気を奮い立たせていた。 作業は午後から始めることになり、昼ご飯まで各々自由に散らばったところを、リヒトを捕まえ畑に向かった。 「どうしました?」 「今朝は、変な態度とってごめんなさい!」 いきなり頭を下げた俺に慌てて 「頭を上げて下さい!謝られるようなことは何もないですよ?私を意識して赤くなって逃げ出す、可愛いサクラに感激していたくらいなんですから!!」 歯が浮いた。 リヒトのペースにのまれている場合じゃない。 俺は深呼吸をする。 集まれ俺のなけなしの勇気!! 「リヒト、しゃがんで」 俺の言葉に何の疑いもなく、片膝をつく。 「ごめん……リヒト……」 俺はリヒトの首に手を回し、そっと自分の唇をリヒトの唇に重ねた。 初めて自分からするキスに心臓がバクバクと煩い。 唇を離して見たリヒトの顔が、あまりにも甘い微笑みで……俺は腰が砕け、その場に崩れ落ちた。 「サクラ……嬉しい」 リヒトに優しく抱き締められ、俺の中に温かい感情が広がった。 俺……リヒトの事、好きなんだ………。 温かい風が吹いて、新しい生命が芽吹いた……。 俺の小さな畑を埋め尽くす、金色の麦の穂。 麦、麦、麦………(ばく)。 心臓がバクバク………俺の心境をダジャレで現してくれたらしい。

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