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実る愛―4―

ややあって、落ち着いた俺は座るリヒトの足の間でその胸に背中を預けて座っていた。 「サクラ…私には婚約者がいました」 突然の告白に俺は慌てて振り返る。 「誤解しないで下さい。親の決めた者です。愛などありませんでした。オクスダートの近縁の娘だったのですが、18になる2ヶ月後、結婚式を挙げる予定でした」 婚約者がいた事より、結婚式を挙げる目前だった事よりもリヒトが17歳だという事に驚いた。 そう言えばみんなの歳を聞いていなかった。 しかし、この世界の17歳は随分と大人びているのだな……俺より一回りも下か……。 未成年者に手を出して、俺は犯罪者になるのか? ずれた事で考え込み黙り込んだ俺に誤解したのか、リヒトが慌てて弁明する。 「本当に何もないですから!手を握った事すらありませんから!」 別に今さらリヒトの想いを疑ってないし、相手に経験があろうが無かろうが、気になる歳でもない。 慌てるリヒトがおかしくて思わず笑ってしまった。 「何で話してくれた?黙っておけば知らないままだったのに」 「私の知らないところで話を聞いて、サクラを不安にさせたくなかったですし、私の全てをサクラに知っていて欲しい」 リヒトが俺の手を取って口づける。 「決められた結婚をして、愛していない者と契り、子を生して……なんてつまらない人生だろうと淡々と生きておりました。谷へ落とされたとき、死に直面しながらも、枷が断ち切れた気がしたんです。せっかく手に入れた自由だ、絶対生き抜いてやると無我夢中で生にしがみつきました」 首筋を軽く吸われて小さい声が漏れる。 「心の残りだったリナーシアはサクラに救われ、私の心はサクラに光を与えられました。味わった事の無い感情に戸惑い、うかれて、貴方を恐がらせてしまったと反省しております。ユミルに親愛の目を向けるサクラを見て嫉妬という感情も知りました。それでもサクラを諦める事など出来無くて、無理強いして嫌われるのも怖くて……ユミルの次にでも愛してもらえればなんて情けない事を考えてしまった」 ジャージの裾からリヒトの手が入り込み地肌に触れる。 「繭玉を探しながら、私が持って帰った繭玉で作った寝具の上で交わるユミルとサクラの姿を想像して、自分は何て愚かなんだろうと考えていた矢先、ユミルに組み敷かれるサクラを見て目の前が真っ白になり……ユミルは私たちの事を考えてくれていたのに……自分は子供でした」 顎を掴まれ口づけを落とされる。 「そんな私でも、あなたは好きだと言ってくれた……私は必ずサクラを守れる強い男となります。側に…ずっと側にいて下さい。……サクラ」 下着の中にリヒトの手が滑り込む。 「あっ………」 ユミルの細く長い指に握られて、身体がつい逃げをうつ。 もう一方の腕で優しく抱きとどめられて、振り払う事も出来ずに、リヒトの手から与えられる快感に飲み込まれる。 「逃げないで……俺は弱い。ユミルの様に余裕はない。ユミルが俺の知らないサクラを知っているのが許せない……」 リヒトの声に情欲の色が籠った。

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