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牧歌斉唱―3―

その後、くちばしを鳴らす音を聞いたリヒトとユミルさんも駆けつけてくれた。 「ごめん、リヒト……ちゃんとついて行けなくて……卵も割れちゃった…」 「私こそ申し訳ありませんでした。卵よりもサクラが無事で本当に良かった」 抱きしめてくるリヒトの腕がいつもより強く、小さく震えていて……。 こんなに心配してくれた事に嬉しく思うのと、こんなに心配をかけてしまった自分が情けなくなる。 女の子の立っていた場所には大きな蜂の巣があり、これと女の子を見間違えたのだろうか? 大きな鳥の観察をしている二人に女の子の話をしようかと思ったが、自分の見間違いだと恥ずかしいし、話すのは控えておいた。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 「お前がついていながらどうした?」 「ユミル…サクラから目を離さない様に…出来れば手を繋ぐなりして決して離れない様にしてくれ。俺はサクラから目を離さない様に注意していたが、急に霧が立ち込め、霧がはれた時にはサクラが消えていた。それに…わずかだが嫌な魔力の残滓を感じる……」 「教会の奴らか?」 「………わからない」 「とりあえず、洞窟の周りの防御壁を強化しておこう。なるべくユーイチは外に出さない方がいいな」 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 銀色の鳥はリヒトもユミルさんも初めて見る鳥らしい、俺が見覚えがあるという事は、この鳥はモユルの力で生まれたモノなのだろう。 「私も、あの卵はドンドルグースだとばかり思っていたのですが…」 「コイツのおかげでユーイチも助かったんだし連れて行くか」 ゆったりと俺たちの後をついてくる鳥もハナコと共に飼う事になった。 ユミルさんは自分で捕まえたゾルグボアという大きな猪と、蜂の巣、ドンドルグースを即席の荷車に乗せて運んでいる。 リヒトは俺の手をしっかり握り込み歩いている。 「ユミルさん1人じゃ大変だし、手伝いたいんだけど……」 森の中のデコボコした道無き道は、荷車では大変そうだ。 「サクラ……あなたとはぐれた後、私がどれだけ不安だったかわかりますか?今はあなたと離れたくないのです」 「ユーイチ俺は大丈夫だから、心配性の王子様を安心させてやれ」 「そうです。私は心配性なので安心させて下さいね」 リヒトはそう言って繋いだ俺の手を引き寄せて手の甲にキスをした。 恥ずかしくて下を向いて歩く俺は、リヒトとユミルさんの緊張をはらんだ真剣な目に気づかなかった。

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