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教会の呪縛―1―

「何故お前がここにいる!エルザ!!」 結局俺は、リヒトと結ばれる事はできなかった。 魔法陣の様な光の輪から突如現れたエルザと呼ばれる女の子。 「貴方との道を作るためとはいえ、こんな男を自ら焚き付け、貴方の体に汚れた手が触れるのをただ見ているしかできないなんて…私、辛かったですわ」 エルザと呼ばれたリヒトの婚約者は優雅な仕草で涙を拭き、俺の髪を掴んだ。 「こんな泥棒猫がつかない様にリヒト王子には呪をかけておきましたの。リヒト王子が誰かと交わろうとすれば私がとんで行ける様に…」 「サクラから手を離せ!!」 リヒトが放った炎をタクトの様な杖でかき消した。 「リヒト王子、少々お待ち下さいませ。今この薄汚い泥棒猫を処刑致しますので」 そう言うとリヒトに向け杖を振り、リヒトの身体は地面に縫い付けられたように動けなくなった。 リヒトを縛り付ける程の力…杖…世界樹の杖……。 「や…やめろ…エル…ザ」 「春姫様の力を…リヒトを傷つけるのに使わないで…」 俺が杖を握りしめると杖は光の粒になって消えた。 エルザに頬をぶたれ、子供の身体は簡単に吹き飛ばされる。 「つなぎのくせに生意気な…こんな物っ!!」 エルザは俺の頭を踏みつけ、モユルを掴むと引き抜き始めた。 「ぐあぁぁっ!!」 痛い!痛い!!痛いっ!!! メリメリと肉を剥がされる様な、骨をえぐられる様な痛みが襲う。 何でこの人はこんな事ができるんだ!? この人の指輪、首飾り、ドレス……。 身につけているもの全てから春姫様の気配を感じるけど、それだけじゃない……。 「やめろ…やめてくれ!エルザ!!」 リヒトがこちらに手を伸ばしているのが、涙に滲んで見える…俺も手を伸ばすが、ひと際強い力で引かれた瞬間。 「うあぁぁァァッ!!!!」 無理矢理引きはがされたモユルが俺とリヒトの間に投げ捨てられた。 「モユル………」 指一本すら動かす力も出ない……投げ捨てられたモユルの身体を抱きしめてあげる事も出来ない……リヒトも声も出せずに固まっている。 「うふふ、特別に私とリヒト王子が世界樹を作り出すところを見せてあげるわ」 世界樹を作り出す…?何を言っているんだ? 「リヒト王子…こんな偽物に頼らずとも…世界樹の血を受け継ぐ私と貴方の子なら本物の世界樹となり、この世に恵みをもたらしますわ」 力の入らないリヒトの身体を仰向けにかえし、エルザはその上にまたがった。 「エルザ…お前は一体何を言っている…?」 「何もご存じなかったのね…私と貴方は世界樹誕生の為に選ばれた人間なのですよ。それを知らずにあなたを谷に落とした愚か者はちゃんと処刑しておきましたのでご安心下さい」 「選ばれた人間……?」 「私の父の名はオクスダート。母の名は前聖女、ブランシュ。私にも貴方と同じ世界樹の血が流れているのです」 「叔母上は若い頃病いで亡くなったはずだ…!!」 「知りませんわ、そんな事。私を生むとすぐ死んだと聞かされておりましたし、お父様からの陵辱がお嫌だったのでは?」 何でもないことのように、微笑みさえ浮かべて話す。 狂ってる……。 「幼き頃より、世界樹だけを食し、このときの為に準備してまいりました……全ては貴方と結ばれる為だけに……」 そう言ってエルザはリヒトに唇を重ねた……止まらない涙ではっきり見えない事だけが救いだった。

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