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教会の呪縛―2―

「そこまでだ、離れろ!!」 ユミルさんが飛び込んできて剣をエルザに向けて振るったが腕一本で止められる。 「何故邪魔をするの?お前達の好きな世界樹を作り出してあげようというのに…」 「貴様の歪んだ力で世界樹が生まれる訳ねぇだろ!!」 ユミルさんが応戦している隙に、横たわる俺の身体を優しい手が抱き上げてくれた。 「リナ…マーニャさん…」 女性にこんな姿を見られてしまったのは何とも情けないが……服を着せられマーニャさんに支えられながら外に連れ出される。 リナが辛そうな顔でモユルを抱いてくれている。 「逃がさないわ…あのガキにはリヒト王子を誑かした報いを受けてもらわなきゃいけないんだから…!!」 エルザが手を上げると、エルザが出てきた陣から兵士達が現れた。 「あの女達とガキを捕まえろ!!嬲るのも犯すのも好きにすればいいっ!!ただし必ず殺せ!!殺して首を持ち帰れ!!」 エルザがヒステリックに叫びだす。 「ユミル!サクラを守ってくれ!!」 何とか腕だけを動かし、エルザを捕まえたリヒトに抱きつき返したエルザは猫なで声で甘える。 「こんなに強く抱き締めて頂けるなんて幸せですわ。あぁ今すぐ貴方の子種を私に注いで下さいませ!!」 嫌だ、嫌だ、嫌だ、リヒトに触らないで……。 戻ろうと暴れる俺をユミルさんが抱き上げて走り出した。 「ちっ…魔法が何も使えない…あの魔女め!マーニャ!!ユーイチを頼む!!」 追ってくる兵士を剣で迎え撃つユミルさんだが多勢に無勢で押され始めている。 「リナ…ごめんモユル貸して……」 リナからモユルを受け取るとり、三人で森へ向け歩を進める。 どこまで逃げれば助かるかなんてわからないけれど……。 モユルのいない俺はただの足手まといでしかない……。 俺が死ねば全て終わるだろうか? いや、全員殺す気だった……。 モユル…ごめんね…ママって言ってくれたのに……。 大好きって言ってくれたのに……俺は結局誰も守れない……。 「きゃあぁぁっ!!」 いきなり横から飛んできた矢を受けてリナとマーニャさんが地面に倒れた。 「リナっ!!マーニャさん!!」 駆け寄ろうとしたが肩を掴まれ、腹部に重い衝撃を受けた。 「かはっ!!」 胃液が込み上げてくる。 髪を掴まれ無理矢理立たされる。 「へへ…この間は世話になったなぁ…」 誰だ……? 「ドルトフ……」 あぁ……あの時の騎士か……。 「あの後、騎士団長の座も奪われて散々だった!!たっぷり礼をしてやるよ!!」 もう一度腹に膝を入れられる。 吐き出した胃液が喉を溶かす。 うつ伏せに倒れた俺の左腕を掴み、肘を思い切り蹴り上げられ骨の折れる音がした。 「うああああああっ!!!!!!」 右手に抱いたモユルに力を込める。 ドルトフの笑い声が遠くに聞こえる もう……いいかな……? もう……いいよね……。 俺なりに…頑張ったと思うんだよね……誰も守れなかったけどさ……。 「体中にこんな痕つけて、小さい体でイヤらしいなぁ〜最後に俺が可愛がってやるよ」 服を破られ肌を舐められる感触がする……。 触らないで……もう誰も触らないで……最後に覚えているのはリヒトが良い……。 【どうかあの子達を幸せに導いてあげてほしい】 『貴方を世界樹様の変わりにしようと思っているわけではありません』 《貴方は世界樹の代わり》 『新しい家族がまた増えましたね』 《私はあの方の子供が産める》 『どんどん賑やかになっていくと良いですね』 《私は家族を作ってあげられるわ》 《あなたはリヒト王子に何を残してあげられるの》 ……俺は…何も出来なかった……何も残せなかった……。 結ばれる事すら許されなかった……挑発に乗って、こんな事態を招いてしまった……。 『もう二度と私から離れないで下さい』 ……側にいる事すら出来なくてごめんね……。 「……触るな」 「あ?」 「俺に…触るなぁぁっ!!!!!!」

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