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この世界の片隅で:リヒト視点―2―

真ん中にモユルを挟んで三人で手を繋いで歩く。 「かー様!モユルのお家くるんでしょ!?もうずっと一緒!?」 興奮してずっと喋り続けるモユルに丁寧に返事を返して微笑むサクラは……なんと言うか……艶と落ち着きがあって、仕草ひとつひとつにドキリとする。 本当なら今すぐ押し倒して、キスして、サクラの存在を全て確認したい……。 まるでサクラの体だけが目当てみたいじゃないかと自責の念にかられる。 「ま~5年前も最後までやれなかったんだろ?サクラもなんか大人になって、艶が出てるし……体が反応してもしょうがないって、リヒト」 まるで俺の心を読んだかのように、ユミルが肩を組んできた。 「はいっ!!昔のサクラ様は天使の様でしたが、今は女神様の様にお美しい!!5年前のリベンジです!!リヒト様!!」 マーニャはサクラに再会して潜んでいた病気が再発したようだ。 「かー様?5年前になにやれなかったの?」 まっすぐな目のモユルに尋ねられ、 「もぉっ!!ユミルさんっ!マーニャさんもっ!!」 真っ赤な顔をして怒る姿は昔のままで……懐かしさと喜びが込み上げて来る。 「ふふふ……みんな、サクラさんとこうしてまた一緒に笑える喜びに浮かれているのですわ。私もまたこうしてお話しできる事が嬉しいです」 「……リナありがとう……やっぱりリナは俺の癒しだね。大好き」 …………………………。 「あら?お兄様、嫉妬なんて情けないですわよ?」 皆、一様に浮かれながら家へと歩いて行った。 ―――――――――――――――――― ぽかんと、口をあけて呆然とする姿すらいとおしい。 「家だ………」 王宮と迄はいかないが、そこらの貴族の邸宅レベルはある館にサクラはビックリして言葉を失っていた。 「小さいモユルもいましたから。いつまでも洞窟では不便でしたので……私たちも手伝いましたが、ちゃんと本職の人間を呼んで頼んだのでしっかりしていますよ?」 「本職?呼ぶ?」 サクラはウラシマタロウになった気分だと呟いている。 「皆、すぐに戻る……サクラ、私から離れないでくださいね」 「うわぁっ!?」 サクラを横抱きに抱くと、足に意識を集中させて一気に飛び上がった。 サクラは俺の首にしがみつき、目をつぶった。 「目を開けて?サクラ」 「……なに……?空、飛んでるの?」 上空から見下ろす街並みにサクラは目を白黒させている。 少し怖いのか、俺に捕まる手の力が強まった。 「あそこにある街がラスタリア国。王も教会もなくなりましたが、民たちは自ら代表を決め、強く生きております。世界樹がたっていた場所は公園となりました。そしてあの谷が私たちが住んでいる場所、ディスプワールの谷。周りの国々……これが、これからあなたが……あなたと私が家族と共に生きる世界」 全てあなたが俺に残してくれたものだ。 「リヒト……」 「帰ってきてくれてありがとう……サクラ」 ――――――唇から伝わる。 ――――――あなたがいる。

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