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繋がる熱―1―
「これって………」
食卓に所狭しと並ぶ料理の数々、俺の前に置かれたスープ。
皆の視線が刺さるなか、スプーンですくってスープを口に流し込んだ。
「かー様、美味しい?モユルもお肉トントンしたんだよ!!」
「美味しいよ、お手伝いもできるなんてモユルは偉いね」
頭を撫でてマーニャに目を向ける。
「レッドキャスクベアー?」
マーニャは目を輝かせながら、大きく頷いた。
「ユミル様がサクラ様に食べて頂くならこれだろうと狩りに行ってくれたんです」
「思い出の味だろう?お前らがしけこんでるうちに獲ってきたんだ、感謝しろよ?」
「しけこんでないよ!!……でも……ありがとう」
ユミルさんの気持ちが嬉しくて、素直に礼を告げると、めずらしくユミルさんは照れくさそうに「おぅ」と頭を撫でてくれた。
懐かしい……懐かしいのかな?
ひどく長い間、寝ていた気はするけれど、懐かしいのとは違う……皆の中では5年……俺の中では……?
もともと4人の関係は強かったけど……モユルは俺を母親と慕ってくれているが、俺はなにもしていない。
人の姿をとり成長しているのだって4人の愛情だ、皆の絆は強い。
俺の知らない5年という時の流れ……。
突然頭を叩かれて、
「ユーイチ!お前またつまらない事、考えてんだろ?体は大きくなっても頭の中は変わらねぇな……お前30って言ってたよな?」
ユミルさんは俺の肩を抱いて、耳を近づけ小声で囁いた。
「リヒトは22だな。俺は33だ……どうだ?俺と大人の付き合いをしてみないか……つまんねぇ悩みなんて吹き飛ばしてやるぞ?そんな艶かしい顔しやがって………」
かぷりと耳を噛まれ、
「ひゃうっ!?」
真っ赤になって耳を押さえる俺に皆の視線が突き刺さる。
ユミルさんは大声で笑いながら背中を叩いてる。
ユミルさんなりの励ましなのか……?
「ユミル………」
俺とユミルさんの間にリヒトが割り入り、ユミルさんを睨む。
「おいおい……軽い冗談だろ?ガキの前でそんな恐ろしい顔するなよ」
リヒトの睨みに全く臆する事なく、リヒトの頭をかき混ぜて、席に戻った。
「サクラ……あなたもです。隙が多すぎる」
こういう風にリヒトに怒られるのは初めてかも……。
「あなたの思いは今夜、全て聞きますから……それまで……ね?」
顎に手を添えられて、至近距離で微笑まれて……な……何かリヒトの色気がパワーアップしてる……!?
バクバク煩い胸を押さえ、コクコクと頷く俺をふふっと笑い、良い子です。と囁いた。
「ダメっ!!かー様はモユルと寝るの!!」
俺の膝の上に乗っかってきたモユルは俺にしがみつきリヒトをにらんだ。
「モユル、食事中に行儀が悪いぞ?そんなお行儀の悪い子、かー様は一緒に寝てくれないかも知れないな」
泣きそうな顔で俺の顔を見上げるモユルに
「モユルのお話しいっぱい聞きたいから、一緒に寝たいな。だから早く食事終わらせようね?」
頭を撫でてあげると、うん!と笑って席に戻った。
リヒトの魔法のおかげで街との交流もあるようで、食卓は彩りに溢れるものだった。
「え?お風呂あるの?」
「お風呂の文化のある国があって、石鹸もありますし、排水もちゃんとしてますよ」
かー様と入りたいという言葉で、モユルと入る。
体は良いけど、子育てなんてしたことのない俺には顔と頭を洗ってあげるのは難関だった。
二人で湯船に浸かり、水鉄砲のやり方を教えて掛け合いをしたり、曇った鏡に落書きをして遊んだ。
そう……鏡があった。
久々に見る自分の姿は……貧弱なおっさん。
頭の上には当然、木は無くて……。
「かー様?」
鏡の前に二人で並んで、
「髪の色は俺と一緒だね」
「そう!かー様と一緒なの!とー様もよく誉めてくれるよ」
モユルはじっと俺の体を見て、
「かー様の体は、とー様ともリナママとも違うね?モユルと一緒?」
子供特有のぐさりとくる一言だ。
俺がひょろひょろの幼児体型ということか?
「皆がスタイル良すぎなんだよ、俺が普通なの」
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