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それぞれの朝【リヒト】

サクラと一つになれた。 サクラがやっと俺のものになった。 『1度寝ただけで所有物扱いする男なんて興ざめ』 何とでも言え。 22年間の童貞をやっと捨てられたのだ。 もう一生童貞だと…どうせサクラがいないのなら、それでもいいと諦めていた……。 イメージだけなら何度も行っていたが、好きな人と一緒なることがこんなに素晴らしい事だったなんて……。 昨夜、部屋の前で入ろうかどうしようかと迷うサクラの気配に笑って部屋の扉を開けたが……やられた。 マーニャの差し金だろうが、バスローブ姿のサクラ。 寝室をこんな恰好で訪れるなんて……。 落ち着く為にソファーに座り葡萄酒をすすめたが、ほんの数口で赤く染まるサクラ。 裾から覗く白い太腿から意識を反らすため葡萄酒をあおる。 ユミルのように余裕のある、大人の男を演じようと必死な俺にサクラは艶のある瞳で見つめてきた。 アルコールのせいもあり味わった唇に理性はがっつりともっていかれた。おまけにサクラときたら、可愛いことばかり言うし、俺に所有痕までつけてきた。 サクラに認められた気がして魔法まで行使して事を進める。 突如、襲う焦燥感と不安感。 あと一歩の所で引き裂かれた過去が背中を押して、早く、消える前に早く……。 怯えたサクラの瞳……そうだ。 怖いのは、不安なのは俺だけじゃない。 サクラを落ち着かせながら、自分を落ち着かせた。 そうして、私のモノが全てサクラに包み込まれた。 下半身に伝わる快感よりも、強く感じるサクラの熱に……。 幸福、安堵、充足、歓喜……。 思わず涙を溢した俺を包み込むサクラの存在。 そこからは正直、覚えていない。 「大丈夫」「嬉しい」「大好き」 サクラの優しさに、思うさま甘えて。 獣のように欲に突き動かされた。 気が付くとくったりとしたサクラの肢体。 その体には俺の所有痕を無数につけて……俺の精液で汚れるサクラ。 汗ばみ髪が顔に張り付いている。 艶をました瞳は涙に濡れて揺れる。 扉の外で聞き耳たてている二人に見せつけてやりたい。 サクラと俺はひとつになったのだ。 サクラは私のモノだと扉を開けた。 倒れ込んでくる二人に誇らしげな目を向ける。 この艶やかなサクラを作り上げたのは私とサクラの愛の結果だ。 サクラはあまり意識がはっきりしないのか、とろんとした目で二人を見ている。 この美しい姿を消してしまうのは惜しいが、マーニャに浄化魔法をかけてもらったとき「んっ………」と眉間にしわを寄せて体をよじるサクラに「うっ……」と声をあげてから「トイレ行ってくるわ」と退出するユミル。 ネタにするくらいは許そう……俺は大人になったからな。

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