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それぞれの朝【リナ&モユル】
「とー様がかー様をいじめた」
モユルは小さな頬をめいいっぱい膨らせて怒りをアピールしている。
幼き日、ユミルに負けたときのお兄様のよう……。
「かー様はとー様を怒っていらしたかしら?」
「……かー様、とー様に手を握られてうれしそうだった」
朝目覚めて、一緒に寝たはずのサクラさんがいないと、私の部屋に泣いて入ってきた。
サクラさんはお兄様が無茶をなされた結果、動けなくなり寝室にいらしたのですが……。
昨日までとー様、とー様でしたのに、一人前に嫉妬をするモユルを愛らしく思う。
「かー様はこれからずっと一緒に暮らしていくのですから。かー様とは、また明日。今日は私とお散歩いたしましょう。そうね…綺麗なお花をかー様にプレゼントしましょう……ね?」
ギュッと抱きつき、
「リナ大好き。リナと一緒に行く。かー様のプレゼント探す」
「あら………」
朝食後、モユルと手を繋いで向かった先。
昨日までは何もなかったそこには……。
「リナ!スゴいね!!お花沢山!!」
色とりどりの花が風に揺れる、花畑になっていた。
はしゃぐモユル。
二人が愛し合うことで生まれる、モユルの奇跡。
「ほら、ちゃんと貴方たち二人の子供よ?サクラさん」
大切な兄と大好きな友達の間に産まれた奇跡の手を引いて、花畑の中を進んでいった。
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