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俺の味?―1―

「かー様、プレゼント」 赤色をした小さな花。 「カーネーション?」 枕元に置かれた、花瓶いっぱいのカーネーション。 「俺にくれるの?」 ここまで運んでくるのも大変だっただろうに……。 「かー様が早く良くなる様にいっぱい気持ちをこめたんだよ」 モユルは自慢気に胸を張っている。 「モユル、ありがとう。嬉しいよ」 抱き締めたいと、体を起こすが痛みが走り断念した。 「モユル」 布団を捲って、モユルを招き入れる。 嬉しそうに抱きついてくる、小さな体。 「かー様、あったかい……」 「ふふ、モユルの方があったかいよ?それにモユルからお花の良い匂いがする。俺も見に行きたいなぁ……」 俺がいた時には花畑なんてなかった、5年間の間にこの辺もずいぶん変わったんだろうな。 早く見て回りたいなぁ……。 「じゃあ、明日モユルと行こう!!今度はぜったいだよ」 「じゃあ指きりね」 『指きり』を知らず、きょとんとするモユルの小指に自分の小指を絡めて指きりの歌をうたうと、モユルもマネしてうたい、二人で秘密を共有した様な気持ちがくすぐったくて額をくっつけて笑い合った。 昼食後の満腹感にうとうとしてきたモユルを見ているうちに俺もいつしか眠りに落ちていた。 ふと目を覚まし、ぼやけた視界にモユルを挟んで見える、リヒトの寝顔。 リヒトの向こうにはモユルがくれたカーネーション。 俺が母親って笑っちゃうけど……絶望からいきなり与えられたこの幸せがずっと続いて行く様に……守って行こうと心に誓った………。 次に覚醒した時、体の倦怠感も痛みも全て無くなっていた。 モユルの気持ちがこもったお花のおかげだね、とモユルの頭を撫でてあげると見せてくれた笑顔がリヒトの笑顔に似ていてドキドキしてしまったのは内緒だ。 体が楽になったので、ハナコ達に会いに行こうかな?と言った言葉に、 「私も一緒に…」 というリヒトと 「とー様はダメ!!かー様とモユルで行くの!!」 と拒否するモユルに挟まれて、両脇から腕を引っ張られるている。 大人になってリヒトは、男の色気が増したなって思ってたけど、中身はむしろ子供っぽくなったのでは? 「リヒト…」 リヒトの頬にチュッとキスをして、 「ごめんね、今日はモユルと一緒に行ってくる」 リヒトはわかりましたと答え俺の耳に口を寄せ、 「今夜もあなたを愛したい……無茶はしませんから……」 ニッと笑い俺の返事も聞かず、モユルの頭を撫でて 「かー様を頼んだよ」と言って部屋を出て行った。 「かー様?顔真っ赤、お熱?」 と心配そうに覗き込むモユルに大丈夫と答えてハナコ達の元へと向かった。

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