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旦那がポジティブすぎて夫婦喧嘩にならない―1―
「かー様!!こっち、こっち!!」
花畑の中からぴょこぴょこと跳ねながら進むモユルの姿に癒されながら、こっちと呼ばれても走って行けない原因を作った男を睨み付ける。
「大丈夫ですか?」
ふわりとした空気を纏い心配そうに手を貸してくれるが、誰のせいだと思ってるんだ。
「私のせいですね。すみません」
にっこり微笑む笑顔は、絶対反省してないだろとわかる。
「絶対今日はしない……」
「そっ!!そんなぁ~もとはと言えばサクラが可愛いのがいけないんじゃないですか!」
後ろからギュ~と抱き締められて、頬をすりすりと擦り付けてくる。
「俺は可愛くなんてないし……て、いうかリヒトなんかキャラ変わってない?」
リヒトの顔を押しどけようと、手を突っ張るがびくともしない。
俺が多少、大きくなったと言っても、埋められない体格差がある。
今も抱き締められているというか、軽々、持ち上げられていて足は地についていない。
「サクラが可愛くお願いするし、ユミルも見てたからちゃんと1回で終えたじゃないですか!」
このさい、可愛いはスルーしても聞き流せない言葉がリヒトの口から飛びだした。
「はぁ!?なにそれ!!ユミルさん見てたの!?見られてるの知っててやるってどういうこと!?」
「王室では普通、妻とやる時も立会人のもとやるもんですよ」
「全然、普通じゃないっ!ユミルさんとどんな顔して会えばいいのさ!!バカ、バカ、リヒトのバカ!!」
恥ずかしさに足をばたつかせて暴れるけど、リヒトは余裕で笑っている。
服の裾を引っ張られて、ハッとした。
「かー様、とー様とケンカ?ケンカダメだよ。仲直りのチューは?」
子供の前で話す内容じゃなかった……。
「大丈夫だよ、モユル。かー様が可愛すぎてちょっと苛めてしまった」
「とー様!!苛めは駄目だとリナが……リナママが言ってたよ」
……………?
「俺は、かー様を愛してるから大丈夫なんだよ。愛ある苛めって言うんだよ」
「リヒト!変なこと教えないの!もう離してよ!!」
やっと解放されて、モユルと手を繋いで歩いた。
「かー様、本当にケンカじゃない?」
「……違うよ。リヒトも大丈夫って言ってたでしょ?」
安心させる様に笑顔を見せた、内心リヒトにはまだ怒りはあるけど。
「愛ある苛めだね!!」
モユルのキラキラした目が痛い。
「あ~それは忘れて良いと思う………」
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