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旦那がポジティブすぎて夫婦喧嘩にならない―2―

風が吹いて花びらが数枚、宙を舞った。 「あ!この前、モユル新しい魔法が出来るようになったんだよ!リナに見せたらすごく喜んでくれたの!」 「え!?モユル、魔法使えるの!?」 「当然です。俺の息子なのに魔法が使えないなんてあり得ません!」 何故かどや顔の親バカリヒトはスルーして、 「モユルの魔法見たいな、見せてもらっても良い?」 モユルは胸を張って「見せてあげる!」と言った後、手を前につきだした。 風が吹き上がり、花びらが宙に舞ったかと思うと、俺の周りを取り囲み、ゆるゆると回り始めた。 花びらは、風に削られてある形になって俺の周りを回っている。 「かー様、手を出して」 「こ、こう?」 水を掬うように、両手を出すと花びらが俺の掌に集まってきた。 「す……凄いね!!こんなに自由に風を操れるなんて!」 「えへへ」 俺の言葉に恥ずかしそうにはにかみながら走り出した。 この魔法をリナに見せたのか………。 俺の掌に集まった大量のハートの形の花びらを見る。 「ねぇ、リヒト………モユルってリナの事………」 隣に立った、リヒトを見上げる。 「えぇ……貴方に似てリナーシア大好きで……私達の前ではリナママと言って、バレてないつもりのようですが、ああやってポロリ、ポロリとね……お風呂もマーニャは平気でも、リナーシアとは恥ずかしがって入りませんからねぇ」 「男の子だね………」 でもまぁ………。 「リナは可愛いもん、しょうがないか……ですか?」 思ってたことをリヒトに言われて、顔が赤くなる。 「でもリナが可愛いのは本当だもん…………」 拗ねたように呟いた俺を、リヒトは嬉しそうに見ている。 「リナーシアと私は、よく似ていると言われていました」 「う…………」 にっこりと微笑むとリヒトはモユルを追いかけて走って行った。 ……そうだよ。 俺のリナ大好きは、リヒト大好きにも繋がる。 だってあの二人の容姿は反則だ。 凛とした顔も、柔らかい笑顔も全部大好きで……。 遠くでモユルを捕まえて、肩車をするリヒトが見える。 すっかり父親な顔のリヒトにまた胸がドキドキした。 ちょっと?文化の違いか、戸惑うこともあるけど、そこはゆっくり話し合って行こう。 「サクラそろそろ戻りましょう」 モユルを肩車したリヒトが隣まで来ていた。 精いっぱい背伸びして、リヒトの頬にキスをした。 突然のキスにびっくりしていたリヒトだったが、 「仲直りのチューですか?」 「仲直りのチューだね!」 二人の言葉に「……そうかもね」とだけ答えて、先を歩いた。 ――――――――――――――――――― 「今日は絶対しないって言った!!」 ベッドの上、俺の服はリヒトに奪われた。 「でも仲直りのチューしてくれたじゃないですか」 「そういう意味と違う!!」 俺の目の前まで寂しそうな顔を近づけて、 「どうしても駄目ですか………?」 と、迫ってくる。 俺がリヒトの顔に弱いのわかってて存分にその武器を使ってくる。 きっと今日も俺の負けだ……。 この顔に勝てる日が先か、俺の体が慣れるのが先か……。 触れてきたリヒトの唇に全ては溶けていった。

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