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奪われた天使―2―
「ん……リヒト?」
目を開けると、目の前にリヒトの顔があった。
「気がつきましたか?良かった」
リヒトはずっと俺を抱いていてくれたようで……。
「ごめんね……重かったでしょ?」
大丈夫ですよ。
と、優しく笑う。
「今、ユミルとモユルで狩に行ってます。もうじき戻って来ますよ」
「……ごめん。結局足手まといだ」
虫、一匹で取り乱して情けない。
「誰にだって苦手なものはありますよ。あれはユミルが悪い」
思い出し、ゾッとしてリヒトの胸にくっつく。
みんなの役に……リヒトの役に立ちたい。
なのに空回りばかりを繰り返す。
「リヒトは?リヒトにも苦手なものあるの?」
「苦手なもの………う~ん……弱いものはありますよ?」
リヒトの弱点?何だろ?想像もつかないけど、俺に平気なものなら、俺がそれからリヒトを守れる!
「サクラです。サクラの『嫌い』って言葉には滅法弱いです。その場の勢いであっても『嫌い』と言われると悲しくなります」
「………俺、さっき嫌いって言った……」
「ええ……」
「ごめん………」
「その分『好き』と言って頂ければ」
ふんわりとした笑顔に暖かい気持ちにつつまれた。
「リヒト、好き。大好き。好き、好き、好………ん…」
リヒトに唇を塞がれて、言葉が途切れる。
「ん……んん………んぁぁ……」
「サクラ、私も好きです。好きすぎて息子にまで嫉妬してしまう……こんな、情けない私は嫌ですか?」
珍しく、しゅんとしたリヒトに謎の母性本能が擽られる。
「うんん……リヒト大好き。愛してる」
もう一度、深く唇を重ねる俺達の背後で……。
「や~ぱっ!!イチャイチャしてやがる。モユルの魔法が神掛かってきたからもしかして……と思ったんだよなぁ~ほら、帰るぞ」
そう思ってたなら、気の利いた登場をして欲しかった……。
モユルの姿が無いのがせめてもの気遣いか?
ささっと、仕度を整えユミルさんにつづいてモユルと合流した。
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