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君に花の祝福を―1―

初めて谷の底から出て街へ来た。 マルカート国、商業で栄える国。 ラスタリア教国以外の谷の外の国。 閉鎖的なラスタリア教国とは違い、実をとる商人達が多い国だけあって実力や実益があれば、わりと人種等こだわらず受け入れられるので、安い入国料だけで街の出入りも自由に出来るらしい。 何故この国に総出で来ているかと言うと……。 「はぅっ……リナ!やっぱり天使!!」 控え室から出てきた、マーニャさんの仕立てた純白のドレスに身を包んだリナは、どこからどう見ても天使!! マーニャさん!! 良い仕事したね!! 今日はここで、モユルとリナのささやかな結婚式をあげる。 マルカート国の田舎にある村の小さな小さな教会。 人々が温かくて、リヒト達も谷で採れた作物を交換に来たり、懇意にしているらしい。 2人の結婚式を挙げたいというと、喜んで引き受けてくれたそうだ。 白い詰め襟姿のモユルとリヒトの間に立つ純白のドレスのリナ……眼福。 モユル……良い娘を嫁に貰って良かったね。 なりたてだけど、母親面をして目頭が熱くなった。 「何を一人で百面相してるんだ?主役は、ほら前に出ろ」 ユミルさんに肩を叩かれて振り返る。 「主役?……うわぁ、ユミルさんカッコいい!!まるで騎士様みたい!!」 黒い軍服の様な衣装をきたユミルさんはいつもと違って……ドキッとする。 「みたいじゃなくて、ずっと俺はリヒトの近衛騎士だったんだけどな?」 格好良いを連発する俺にマーニャさんが、 「リヒト様が嫉妬なされてますわよ?結婚式当日に他の男性に目移りしてはいけませんわ?」 いけませんわ?と良いながら目がキラキラしているのは気のせいだろうか? リヒトの方を見ると目が少し怖い。 「て、言うか……どういうこと?今日の主役はモユルとリナでしょ?俺は……関係なくはないけど……」 ユミルさんはニヤンとイタズラが成功した子供の様に笑った。

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