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第20話

「ねぇ姫ちゃん先生」 「なーに?てか、姫ちゃん先生言うなって何回言ったら分かるのかな~?」 莉琴先生はみんなに姫ちゃん先生と呼ばれていた。 苗字が姫野でその上綺麗な人だから姫ちゃん先生。 本人は嫌がっていたけどね。 「えー別によくない?」 「全然よくないから。で?」 「幸せって何?どういうのを幸せって言うの?」 純粋に気になっていたことを尋ねた。 「んー。そうねぇ……。私は幸せって人それぞれ違うものだと思うのよね。十人十色って言葉があるでしょ?その通りでさ、全員が同じ考えを持っているとは限らない。1人1人が自分なりの幸せの定義というものを持っていて、その定義をもとに幸せを決めてる。だからご飯を食べることを幸せとする人もいれば、友人と騒ぐことを幸せとする人もいる。これが幸せですよってものは存在しないと私は思うわ。」 「ふーん。幸せって難しいね。幸せかどうかは自分の考えや捉え方次第ってことでしょ?」 「ま、そういうことになるわね。当然自分にとっての幸せが他人にとっては不幸であることもあるしね。」 姫ちゃん先生の話は正直難しかった。 幸せという感情を知らない俺にもこれが幸せだと言える日は来るのだろうか……。 そもそも俺が幸せになっていいのだろうか。 そんなことを思っていたらつい声に出してしまった 「俺が幸せになる日なんてきっと来ないよ。」 「心配しなくて大丈夫よ。きっと侑舞くんが幸せを知る日は来るわ。それが自分で見つけるものであるか、誰かによってもたらされるものであるかは分からないけど。とにかく今は幸せになるためにも自分を許してあげることから始めましょ?」 「姫ちゃん先生が俺のことを幸せにしてよ。」 「無理。」 「即答は酷くない?」 「無理なもんは無理。侑舞くんを幸せに出来るのは私じゃなく他の誰かよ。ほら、今日のカウンセリング始めるわよ。」 「はーい。」 その日もいつもと変わらぬ日常が流れていた。

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