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第28話

和田side (本当にどこに行っちゃたんだ。全然見つからない⋯⋯。早く見つけないと!) 侑舞の様子を見に行こうと歩いていた時に、たまたま会った湊と病室に行ったら、そこに侑舞の姿はなかった。 予想していなかったまさかの展開だった。 担当になったときに姫宮先生にも気を付けておくようにと散々言われていたのに、久しぶりに会って懐かしさに浸りその言葉をすっかり忘れていた。 侑舞が自殺をしようとしたことがあったことを和田は姫宮から聞いていたのだ。 その上でしっかり様子を見ててくれと頼まれていた。 あれは姫宮が海外へ行く前日のことだった。 「いい?私の代わりにあんたがあの子を救ってあげるのよ?私はしばらくの間あの子の傍にいてあげることはできないから。頼んだわよ和田。」 それだけを言うためにあの人はわざわざ病院にきた。 申し訳なさそうにしながら、あの人は俺に侑舞のことを託していったのだ。 そんなあの人に俺は 「もちろんです。精一杯自分にできることをします。」 と答えたんだ。 なのに実際は何もできていなかったんだと思い知らされた。 姫宮がどれほど凄い人であったのかを痛感させられた。 だが、今侑舞の傍にいるのも担当医なのも俺だ。 弱音など吐いている場合ではない。 1つ息を吐きだして再び走り出そうとしたとき携帯が振動した。

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