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第30話
湊side
侑舞が見つかったことを和田に連絡した後、和田が来るまでの間に侑舞を発見した時の状況について碧海に聞いた。
だが碧海は少し考える様子を見せた後、和田先生が来てから話すからとだけ言ってそれ以上話すことはなかった。
その後やってきた和田による診察を無事に終えた。
和田によると、とりあえず安静にしてさえいれば大丈夫だろうとのことだった。
無理して動いたため熱は上がってしまったが、今以上に上がらなければ命にかかわるような状態には滅多なことがない限りならないそうだ。
安堵のため息が漏れたが、それも一瞬のことでまたすぐに張り詰めた空気が病室内を包んだ。
碧海は病室内にいる面々を見て、少しためらいながら重い口を開いた。
「はっきりいって俺は話すべきなのか今も悩んでる。それに本人がいる病室で話すのは気が進まない。でも、ここにいる全員が気になっていることだと思うから話します。」
そして碧海の口から告げられた事実は、あまりに受け入れがたいものだった。
「湊の弟がいたのはこの病院の屋上だった。もっと言えば俺が発見した時に彼は屋上を囲う手摺の向こう側にいた。」
まさかの内容に久我野が叫ぶ
「は!?ちょっと待てよ!それってーー」
「彼は自殺しようとしてたんだ。たった1人、あの場所でな。」
もう誰も口を開こうとはしなかった。
室内には異様な静けさだけが漂っていた。
「なんでそうなったのか。そう至った経緯を俺の口から話すことはできない。今俺が言えることは彼が死のうとしたという事実だけだ。」
そう告げると碧海も口を閉じた。
沈黙が続く中、その沈黙を破ったのは和田だった。
「無事でよかった。今言えることはそれしかないね。生きてる状態で見つかってよかった。」
「そうですね。あとは少しでも早く回復してくれることを願うことしかできませんからね。」
少しずつ張り詰めた空気が和らぎ周りが会話をはじめた中、湊だけはどこか思いつめたような表情を浮かべその会話に加わることはなかった。
そんな湊を心配げに見ていた人物がいたことなど湊は知る由もなかった。
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