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第35話

「人はさ何だかんだ言って結局は自分が一番なんだよ。自分が一番かわいい。自分を守るためならどんなに大切なものでも平気で犠牲にする。それはものだけに限定されず、人だって対象になる。何かを守るためには何かを犠牲にしなければならないんだ。何も失わずに得られるものはこの世界ではとても少ない。」 「それに、自分の心を守るために今ある平穏を脅かすものから逃げる。これは別に珍しい話ではないと思う。誰しもが気づかないふりをすることで壊れそうな心や関係・環境を守っている。だって、それを知らなければ表面上はお互い笑っていられるし、幸せでいられるのだから。」 そこまで言うと和田はパッといつもの優しい笑顔をこちらに向けた。 「はい!独り言終わり!ご飯食べよー。」 「俺は……俺は自分を許すことなんてできません。確かに先生の言った通りなのかもしれませんけど、だからといって俺のやったことは許されることではないんです。」 湊だって分かっていた。 誰も傷つけずないでいられないことなど。 それでも湊にとって一番大切な存在である自分の弟を苦しめていた事実を容認することができなかったのだ。 「もー俺の独り言だって言ったのに~。」 自分を責め続ける湊に和田はそう言って苦笑した。 これは俺が尊敬してる先輩医師が言ってた言葉なんだけどね、と切り出した。 「人間は誰しも過ちを犯す。完璧な人間なんて存在しないんだ。過ちを犯すのは仕方のないこと。大事なのはそこからどうするかなんだよってね。」 「…………」 「ねぇ湊君。自分のしたことが間違っていたと思うなら謝ればいいじゃない!君たちはお互いに生きてるんだから。話ができるんだから。大丈夫、侑舞くんは話せばきっと分かってくれるよ。君たちに今必要なのは、それぞれが思ってることを相手にぶつけることだ。お互いの気持ちに向き合うことだよ。」
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