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第44話
とにかく今すぐに自分が戻れるわけではない。
金曜までは仕事があるので、日本へ発つのは土曜になる。到着は日曜だから、職場に行けるのは月曜日からだ。
今は和田に頑張ってもらうしかない。
弱気になっている和田を励ましていたらコールがかかってしまった。
最後に困ったら連絡するようにだけ伝えて通話を終えた。
時間的にはそこまで通話をしていたわけではないのに、随分長く電話していたように感じた。
とりあえず応じれなかったコールの内容を確認するために連絡をしたら、私が行かなくても対応できるとのことだった。
(4年前のことを和田にも詳しく話しておくべきだったな。)
話しておけば和田も対応が変わっていただろうし、自分自身を責める事態になることもなかったかもしれない。
(そもそも大本を辿れば、私が海外に行かなければよかったんだよな~)
だが、そんなことを思っても起こってしまったことが消えるわけではない。
海外に来たこと自体には後悔はしていない。
患者に寄り添える医者になりたい。
その夢をかなえるためにここに来た。
日本で精神科医として心のケアの仕方を学び、日本ではなかなか実績を積めなかったから海外にきて外科医としてのスキルに磨きをかけた。
姫宮を変えたのは侑舞との出会いだ。
侑舞に出会ってから、患者の心だけではなく命も救ってあげたいと思うようになった。
きっかけは1度だけ侑舞が生死を彷徨ったことだ。湊も和田も知らない。
湊にはあえて伝えず和田はちょうど他病院に行っている時だった。
姫宮は治療室に入っていく侑舞を見ていることしかできなかった。
何もできなかったのだ。
医師免許があってメスも握れるのに、姫宮は立ち尽くすことしかできなかった。
そうなって当然だ。
当時の姫宮には高度なオペができるほどの技術も覚悟も全然足りていなかった。あるのは最低限の必要な知識と技術だけ。
それからだ姫宮が変わったのは。
メスが握れれば自分が救える患者は増える。
一人でも多く明日を迎えられるように、自分に出来ることをしようと考えた。
そこで自分に足りないものを補うためにアメリカに渡る決断をした。
そして今の自分がある。
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