60 / 82

第58話

病室にはあっという間に到着した。 和田がドアをノックし中に入る。 それに続いて、姫宮も病室に一歩足を踏み入れた。 侑舞はまだ眠っており、和田は点滴などの確認だけするとすぐに病室を後にした。 姫宮は、他に仕事を与えられているわけでもなかったので、そのまま残ることにした。 残ったはいいが、やることがあるわけでもないので、窓の近くに行き、ボーっと窓の外の景色を眺めていた。 しばらく外を見ていると、ゴソゴソと動く音がした。 ようやく起きたかと思い、ベッドの方を見た。 するとベッドの上には、まるで幽霊でも見たかのような顔をした侑舞の姿があった。 そんな侑舞を見て思わず笑いがこぼれてしまった。 「久しぶり。あんたさー、久しぶりの再会なのに最初に見る顔がそれってどうなの?(笑)」 「え?まって。嘘だ……。なんでいるの?夢???」 そう言って侑舞は目を擦っていた。 「ちょっとちょっと~、その反応は酷くない?本物に決まってるでしょう?」 「ほんとに姫ちゃん先生なの!!?」 「だからそうだって言ってるじゃない(笑)」 すると侑舞は突然涙を流した。 それにはさすがの姫宮もぎょっとした。 「え!?なんで泣くのよ!泣くことはないでしょうよ!」 「だって、だって……。姫ちゃん先生、突然何も言わずにいなくなっちゃったから。」 「あーーー。それに関しては悪かったって。スキルアップのために、アメリカに行ってたのよ。」 「アメリカ?」 「そーアメリカ。ついでに、いい機会だからあんたに他の医者と信頼関係築いてもらおうと思ったんだけど、ダメだったみたいね。」 「……だってみんな嘘くさかったんだもの。しょうがないじゃん。」 「はいはい。で、今日からまた私が侑舞くんのカウンセリングの担当になったから。」 「え?カウンセリング?別にやらなくていいんだけど。」 侑舞のその言葉を姫宮はすぐに却下した。 「あんた私がいない間に何したんだっけ~????」 姫宮の言葉に侑舞は黙ってしまった。 「私がいなかったとはいえ?約束破ったのに、まさかそのこと忘れたなんて言わないわよね?しかもまだ1週間くらいしか経ってないのに。まさかね?」 「……すいませんでした。」 「まぁ生きてて良かったわ。それだけが救いよ。」 そう言って俯いた侑舞の頭をなでた。

ともだちにシェアしよう!