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第59話
侑舞が落ち着いたところで、自殺未遂に至った経緯などについて話をした。
そしてその内容は、やはり姫宮の予想通りだった。
「ぶっちゃけさ、湊君は迷惑だと思ってないと思うよ?」
「そんなの分かんないじゃん。言わないだけってこともあり得るでしょ?」
「だとしても、迷惑を全くかけないことは不可能よ?生きてる以上は仕方ないことなの。」
すると突然侑舞が驚いたように言った。
「それ……。その言葉に似たことをあの人も言ってた。」
「あの人って?」
「俺が死のうとしてたのを止めた人。多賀さんだったかな?兄さんの友達なんだって。」
(ふーん。なかなか良い出会いがあったんだな。多賀くんねー、覚えとこ。)
「そいつ、よく分かってるわ~。良かったね、止めに来たのがその人で。他の奴だったら、どうなってたか分からないでしょ。」
その言葉に、侑舞は確かにそうかもしれないなと思った。
侑舞にとっては、面識がない人の言葉であそこまですっと入ってきたのは珍しいことだ。
「ま、なんにせよ侑舞くんは湊君とちゃんと話をしなさい。いい加減逃げるのは終わりにしないと。自分でも分かってるんでしょ?このままじゃいけないことは。」
「それは分かってるよ。でも、怖いんだ。」
「怖いから逃げて、私がいなかったこの2年、その恐怖からは解放されたの?」
た。
「…………」
侑舞は黙り込んだ。
答えはNOだったからだ。
結局事態は悪化しただけだった。
「答えはとっくに出てるんでしょ?」
「今は無理。まだ整理ができてないし、何を言えばいいのか全然分からない。」
「さすがに体調も万全じゃない子に、今すぐ何とかしろとは言わないわよ。そこまで鬼じゃないー⋯⋯ってなによ、その顔は〜。嘘だろって言いたげね??」
「べつに……。そんなこと思ってないし。」
「あっそ。まぁ、とにかく今は体調を戻すことだけに専念しなさい。退院した日にでもゆっくり話をすればいいわ。」
「うん。ありがとうございます。」
「いいえ。じゃあ、今日はここまでにしようか。疲れたでしょ?」
「んー。ちょっと?」
「明日も来るから。あ、別にもう今日は呼んじゃダメとかではないから、話し相手が欲しかったら呼んでくれていいわよ。」
それだけ言って姫宮は病室を出た。
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