63 / 82
第61話
和田side
ようやく侑舞くんの退院の日がやってきた。
退院前の検査をするために病室へ向かっていた途中、タイミングよく廊下で会った、姫宮先生と話をしていた。
「やっとですね。」
「そうね~。でも、まだ1番の難関が待ってるからねー。」
そう。
姫宮先生の言う通りだ。
難関というのは、今日あの2人はお互いの気持ちと向き合う予定であること。
ついにこの日が来た。
姫宮先生は侑舞くんを、俺は湊君を説得し何とかここまできたのだ。
ここだけの話、侑舞くんの方にはもう1人強い助っ人がいた。
湊君の友人である多賀碧海君だ。
姫宮先生は、もちろん1人でも頷かせることができるが、無理やりじゃあ意味がないからと、多賀君を使ったのだ。
多賀君は一見冷たそうなイメージだが、相手のことはよく見えていて、うまい具合に侑舞くんを説得していた。
はっきり言って俺の方も助けてほしかったくらいだ。
「とはいえ、こっから先は私たちにもどうすることも出来ないからなー。それぞれに頑張ってもらうしかない。」
「ですよねー。」
当人たちと同じくらいこの2人も緊張していた。
「湊君が迎えに来るんだっけ?」
「そうです。大学は午前までにして、午後の授業は休んで来ると言っていたので。バイトも無いそうですよ。」
「あーわざわざ休んだのか。」
「きっかけがないと話ができそうにないからって言ってましたよ。」
「たしかにね〜。なかなか勇気がいる内容ではあるわな。」
その言葉に相槌を打った。
「えーっと、このあとすぐに健診やるんだっけ?」
「そうです。」
「了解。終わったら連絡入れて~。退院前最後のカウンセリングするから。」
「わかりました。」
じゃあまた後でと、2人はそこで別れた。
ともだちにシェアしよう!