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第62話
湊が運転する車に揺られて約30分。
2週間ぶりの家に帰ってきた。
家までの車内はとにかく静かだった。
お互い何を話せばいいのか分からず、どうしようか悩んでるうちに自宅に帰ってきてしまった。
どことなく気まずい空気のまま、家の中へと入った。
侑舞は、とりあえず荷物の片付けをしなきゃと思い、洗濯するものをカバンから出したりし始めた。
そんな侑舞に、湊は意を決したかのような面持ちで声をかけた。
「侑舞、少し話をしない?」
「……うん。俺も兄さんと話したいことがある。」
湊の提案に侑舞は静かに頷き、同意であることを告げた。
湊に、とりあえずソファーに座って温かい飲み物でも飲みながら話そうと言われ、その言葉に素直に従ってソファーに自分の体を沈めた。
「コーヒー・ココア・紅茶どれにする??」
「ココアがいい」
俺の返事を聞くと、兄さんはちょっと待っててと言い、キッチンに向かった。
しばらくすると2人分のココアと、パウンドケーキを持って戻ってきた。
そして俺の前にそれを置いた。
「このパウンドケーキ、久我野先輩が昨日くれたんだよ。あ、久我野先輩のこと覚えてる?」
「覚えてるよ。多賀さんと一緒にいた人でしょ?」
「そう。目覚めたときに行ったきりで、申し訳ないからって、退院すること言ったらわざわざ買ってきてくれたんだよ。」
「そうだったんだ。今度会ったらお礼言わなきゃ。あ、いつ会えるか分からないから、兄さんからお礼言っといてもらってもいい?」
「いいよ、伝えとく。先輩に都合がいい日聞いとくから、今度さ碧海も含めた4人でご飯でも行こうか。」
「うん。」
そこまで会話をしたところで、また2人の間には沈黙が流れた。
お互いになかなか切り出せず、口を開けたり閉じたりをひたすら繰り返していた。
(兄さんが折角話振ってくれたんだから、今度は俺から話し出さないと。)
そうは思っても一歩が踏み出せずにいた。
気持ちばかりが焦ってしまう。
これじゃあ今までと何も変わらない。
姫ちゃん先生とも多賀さんとも約束したのに。
(このままじゃダメだろ。しっかりしろ。)
そう自分を叱咤し深呼吸をした。
(大丈夫。自分の気持ちを兄さんに伝えるだけだ。)
1度目を閉じてから目を開け、兄さんの目をしっかりと見て話を切り出した
「兄さんあのねーー」
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