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第65話
侑舞は兄の口から告げられた事実があまりに衝撃で、言葉を発することができずにいた。
まさか兄さんが、俺の変化に気づいていたとは思っていなかった。
申し訳ないという感情を隠せていると思っていた。
侑舞は涙が止まらなかった。
心がただただ痛かった。
俺に謝罪の言葉を言いながら泣き続ける兄さんに、なんて声を掛けたらいいのかも分からない。
侑舞は頭の中も心もパンク寸前だった。
暫くすると兄さんの謝罪の言葉が止み、静寂が部屋を包んだ。
お互いに一言も発することはなく、時折鼻をすする音だけが部屋に響いた。
それからどれくらい経っただろうか、兄さんが自分の目元を拭うと立ち上がった。
そして、優しい笑顔を向けてきた。
「話は終わりにして、片付けしちゃおっか。」
そう言って、侑舞のカバンの荷物を片付け始めた。
話を終わらせた兄に侑舞は思わず声をかけた。
ここで終わらせたらもうこの件について話ができなくなる気がして。
「あの、兄さん……」
「んー???なーに?」
聞き返してはくれたが、兄さんの声には、これ以上は話さない。というような何かを感じさせた。
「いや、なんでもない。」
侑舞はそう答えることしかできなかった。
「そ?あ、そうだ。夜ご飯どうするか考えておいてね。外食でもいいし、出前とってもいいし、大したものはできないけど、それでもよかったら俺が作ってもいいしさ。」
「うん。考えとく。」
「決まったら言って。」
そう言うと兄さんはまた片付けに戻った。
侑舞も、もう兄に何か言うことはせず、兄に倣って片づけを始めた。
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