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第74話
残った2人の間には何とも言えない空気が流れていた。
だが、それを断ち切るかのように久我野が湊に話しかける。
「まぁ、多賀の言ったことは間違ってはいないけど、最終的に決めるのは湊だ。どうするにしても俺はお前を責めたりする気はない。あ、もし本当に家出るなら、湊さえ良ければ俺の部屋に来てもいいから。どうせ短期間の予定だろうし、わざわざ家借りるのも面倒だろ。」
「もう少しだけ考えてみます。もし家出ることになったら、お言葉に甘えてお願いするかもしれないので、その時はよろしくお願いします。」
「了解!」
そろそろお互いに授業の時間になるので、そこで別れた。
湊は授業中もこれからのことで頭がいっぱいで、全く集中できなかった。
こんな状態では授業どころじゃないので、本当はもう1つ受ける授業があったのだが、家に帰ることにした。
家に帰って、バイトまで時間があったので横になったりして時間を潰し、そろそろ行こうかなと階段を降り始めたら玄関のドアが開く音がした。
どうやら侑舞が帰ってきたらしい。
今更部屋にまた戻るのも不自然なので、そのまま玄関に向かった。
そして目を合わせることなく、バイトに行ってくるとだけ伝え、家を出た。
バイトではいつもしないようなミスを連発してしまって、周りに心配されてしまった。
体調が良くないんじゃないかと心配した店長に、予定より早く上がるように言われ帰路に着いた。
家に帰るともうリビングの電気は消えていた。
リビングに入ったら異様なほどに寒くて少し違和感を覚えた。
暖房を1度入れていたらここまで部屋が冷えることはあまりないからだ。
水を飲んでからお風呂に入ろうとキッチンに入ると、あることに気づいた。
米が炊かれてないのだ。
念のために冷蔵庫を確認すると研いでおいた米がそのまま残っていた。
(ご飯食べなかったんだな。)
本当は注意したいが、自分は一緒にいなかったわけだし、その状況を目で見て確認したわけじゃないのでしょうがない。
早く上がらせてもらったとはいえ、時間が遅いことに変わりはないのでささっと風呂に入ると、湊もご飯は食べずに寝ることに。
自分の部屋に行く前にそっと侑舞の部屋を覗いて、眠れているかだけ確認した。
中に入ったわけじゃないから確証はないが、おそらく眠っていたと思う。
そっと扉を閉めて、自分の部屋に入り布団を頭まで被って目を閉じた。
思っていた以上に疲れていたのかすぐに深い眠りに落ちて行った。
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