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第76話
碧海は講義がある教室へと向かいながら姫宮に電話をかけた。
暫く呼び出し音が続く。
(忙しいか……)
諦めて、後で掛けなおせばいいやと電話を切ろうとしたとき、向こうから声が聞こえてきた。
「もしもし???」
「あ、もしもし多賀です。先日はどうも。」
「おー!多賀君か!!こちらこそ先日はとっても助かりました。ありがとうね。それで、どうかしたの??」
「実は、湊と侑舞くんの話し合いの件でちょっとトラブルがありまして。俺もさっき湊から聞いたんですけど、どうも上手くまとまらなかったようで。」
「あちゃ~。ダメだったのか。」
「はい。どうやら湊が謝り倒してしまったようで、それに侑舞くんが何も返せずに湊がそのまま終了させたみたいです。」
「うーわ。まじか。まぁでもその状況だったら話し合いも強制終了になるわな……。うーん、どうしたもんかね。何とかもう1回話し合いの場を作らないとだね。」
「⋯⋯それなんですけど、ちょっと難しいかもしれません。」
俺の言葉に姫宮先生は不思議そうな声を出した。
「んーと、それはどうして?」
「今朝のことなんですけど、湊が朝食とメモだけ残して、侑舞くんと顔を合わせることなく家を出てきてしまったらしくて……」
「んんん。まじかぁぁぁぁあ。」
「まじです。もっと言うと、湊なんですが家を出ることも考えてるみたいなんですよ。」
「は!?いやいやいや!!!!それはマジでヤバイ。今離れるようなことがあれば、関係の修復はかなり困難になるわよ!!?」
「そうなんですけど、当の本人がもう訳の分からない方向に走っててどうしようもないんですよ。しかも先輩が変に味方になってるので余計に。」
「先輩って??」
「あー、姫宮先生は会ったことないんでしたっけ?湊と俺と仲のいい先輩がいるんです。その人湊のことが大好きで、うーーん何て言えばいいんですかね……湊のことしか見えてなくて全体像を掴めてないもんだから、変に擁護しやがるんですよ。いやまぁ、味方はいた方がいいんですけど、悪影響を出しそうというか……そんな感じです。」
「なるほど〜。まー、なんにせよ対策を練らなきゃね。ちょっと考えるわ。」
「はい。一応俺は侑舞くんとの食事の件を早めて、今週末に行けるように調整かけて話ができるようにしてみます。」
「うんうん。そうしてもらえると助かる。こっちも明日辺りに連絡して早めにカウンセリングの予定を組むわ。」
とにかくやれることをやろうと決め、こまめにやり取りをすることを約束して通話を終えた。
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