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第9話
案内してくれた人が扉を開ける。
中に入るようにオレグ様に言われて足を進めた。
「っ、ひ、ひろ……」
「アメデ、王の前まで歩け。顔は見るな」
「うん」
あまりにも広くて豪華な部屋で萎縮する。こんな部屋初めて見た。
王様は高そうな椅子に座って俺を上から見下ろしている。
すぐそばまで行くと、オレグ様が「跪け」と言うから言われた通りした。
「オレグ、そして人間、よく来た。」
「はっ」
「は、はい」
おどおどしながら返事をすると、王様は笑って「顔を上げろ。オレグもいつもの様に話せ」と優しく言ってくれる。
顔を上げて初めて王様の顔を見た。
あれは······オレグ様と同じライオンか?
この国の王様はどうやら人間ではなく獣人らしい。
「本当に黒目黒髪だな。珍しい。オレグ、よく見つけたな。」
「まあな」
砕けた口調になったオレグ様が、立ち上がって俺の腕を掴む。
「可愛いだろ。俺の人間だ。」
「結婚するのか?それなら盛大に祝おう。国を挙げて祝福するぞ」
「それもいいな。アメデ、国民に祝ってもらうか!」
「結婚するの!?」
まずはそこに驚いている。結婚するつもりなんて全くないし、そもそもこの国は同性婚を認めているのか!?
「俺男だよ!」
「構わん。なあ、王」
「ああ。愛する者と婚姻することに何の問題がある。」
「お、俺はまだ、オレグ様を、愛してるだとかそんなの……!」
ない!と言おうと思ってオレグ様の顔を見たら、悲しそうな表情をしていたから言えなかった。
「オレグ、嫌われてるのか?」
「……そうなのか、アメデ」
「ち、違っ!」
決して嫌ってはないけど、いろいろと物事が進むのが早いんだよぉ。
「違うのか。ならアメデは照れているんだな?可愛い奴め。」
「オレグ、いつ式を挙げるつもりだ。」
「そうだなぁ。アメデ、いつがいい?」
「まだ決めないで!結婚なんて出会ってからそんなに経ってないのに早すぎる!」
思っていたことを伝えるとオレグ様も王様も「確かにそうか」と言って頷いた。
よかった、話をわかってくれる人達で。
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