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第3話

部屋が静かになって1時間ほどした時… 不意にあることに気づく。 「この匂い…」 なにやらかすかに漂ってくる匂いは… 「チョコ?」 甘いような、独特の匂いが鼻をかすめる。 チョコ貰えなかった寮の誰かがやけで自作のチョコレート作ってるのかな… いや…でもそんな悲しい行いは流石にみんなしないだろうし… コウジは首をかしげながら考える。 もしかして瞬助が腹いせにキッチンでチョコレートやけ食いしてるんじゃ… なんとなく心配になり、そっと部屋の戸を少しだけ開けて覗いてみる。 「……」 そこにいたのは… 「えっ…」 その姿に驚く。 「っ、やべッ!水入った!!えー…ダメかなコレ…」 一人ブツブツ言いながら不釣り合いなキッチンに立つ長身の男… 幸田瞬助… 「仕方ねぇ…こっちだけにするか…」 背を向けているため、コウジ気付かず悪戦苦闘しながら何やら作業を続けている。 しばらく唖然として、その姿を見てしまう。 恋人の意味不明な行動に… 困惑しながらも真意を確かめるため… そっと声をかけてみる。 「し…瞬?何してるの?」 「うわ!!びっくりした!!」 不意に驚いたように大声を出して振り返る瞬助。 「え!びっくりしたのは僕だよ…何してるの?」 「べ、別に…なんでもねぇよ…」 何やらしらばっくれようとする。 「ていうか…チョコレート付いてるよ、顔に…」 どうやって付いたかはわからないけれど…瞬助の右頬に飛び散ったようにチョコが付着していた。 自分の頬を指差して教える。 「えっ!?」 指摘されて、慌てて右手の甲でさっと拭う瞬助… 「あ、手でしちゃ…」 「え?」 甲ですったため頬にチョコが擦れたように広がってしまう… 「あーぁ…余計広がった、仕方ないなぁ」 コウジは呟いて近くに置いてあるタオルを濡らして頬を拭こうとキッチンの水道まで移動しようとする… 「お、おい!そっち行くなよ…」 「え?なんで?って…うわ」 キッチンの水回りは、瞬助がチョコレートと格闘したらしい形跡で…かなり散らかっていた。

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