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第4話

「なんで、こんなことして…」 驚きながらもふと目に入った四角いトレイに入ったまだ固まっていないチョコレート。 その上に何やら文字が… 『コウジへ おまえのはじめてはお…』 そこに、ホワイトチョコペンでいびつに書かれた文字を読んでみるが… 「わーーー!!!まだ読むな!!」 途中でそのチョコを手で隠して大声で遮る瞬助… さっと冷蔵庫に仕舞い込む。 「え…って、これ…まさか、僕に?」 にわかに信じられなくて、思わず聞いていた… 「…あー!もう、出来てから驚かそうと思ったのに!!」 そうすると、長身の彼は地団駄を踏むように吐き捨てる。 「……」 疑問の目で見つめると…何も言わなくなる瞬助… 「…なんで」 そう問う言葉が零れる。 「だって…お前が手作りのチョコが嬉しいって言うから…、それに…」 「え…」 「っていうか!なんで気づくんだよ!20分で簡単にできるっていう生チョコキット買って急いで作ってたのによ」 悔しそうに言う瞬助。 「いや、普通気づくよ…この匂いに…」 「え?匂い?」 「瞬はずっと嗅いでるからわからないかもしれないけど…結構チョコレートの匂い充満してるから…多分ほかの寮の部屋にも流れてるかもしれないよ」 「マジで?」 「マジで…でも、ボウルとか調理道具…どこで手に入れてきたの?」 「100均…」 「え、これのためだけに買ったの?」 「悪りぃかよ…」 「いや、ちょっと…瞬の行動が、予想外過ぎて…」 「どことも知れない女に先越されるのが我慢ならなかったから」 瞬助がぼそっと呟く… 「どう言う意味?」 「いいから!完成するまで待ってろって!」 「う、うん…それ、大丈夫?」 キッチンの散らかりようを心配して聞くが… 「俺がなんとかする…とりあえず部屋戻ってろ!」 「わかった…」 心配で後ろ髪引かれる思いのコウジだが…言いだしたら聞かない瞬助、仕方なく頷いて部屋に戻る。

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