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第5話

それから30分ほどして… コンコン… 部屋で待つコウジもとに瞬助が笑顔で、チョコレート片手に戻ってくる。 「あ、キッチン片付いた?」 「大丈夫、大丈夫!!まぁ、ここに座れ!」 勉強机をさして言う瞬助。 「うん…」 大丈夫とはいうものの、当人、頬についたチョコレートはそのまま… 忘れている様子。 心配しつつも、言われたとおり座るコウジ。 「つか、まだ食ってねぇよな…」 「え?あ、貰ったチョコ?食べてないよ…はい」 引き出しを開けて綺麗に包装された手作りチョコを見せる。 「オッケ!それは、今は片付けて」 「うん…」 首をかしげながらも瞬助の言うとおりにする。 片手には無造作にラップに包まれたトレイ… それをくれようとしているんだろうな…とは分かるけれど、なぜ瞬助がこんな行動に出たのか、いまいち理解不明なコウジ。 すると瞬助は、勉強机に座るコウジの前にいきなり膝まづいて、おそらく冷蔵庫からそのまま持ってきたであろうラップのかかったトレイを両手で差し出す。 「親愛なるコウジくんへ、俺様の手作りバレンタインチョコを今すぐ食べてください」 珍しく敬語などを使いながら… 「……」 少し引きながらも…とりあえず受け取ると、瞬助はニコニコして待っている。 「開けるよ?」 「おう!」 「……」 「読んでみな!」 なんだか意気揚々と勧める瞬助だけど… 「……瞬、読めないんだけど…」 その生チョコの上に書かれた文字は、溶けて滲んで見えなくなっていた… 「え!?」 「ほら…」 首をかしげながら瞬助に見せる。 「えぇ…、マジで!?…仕方ねぇな…俺が読むから」 「う、うん…」 『コウジへ、お前の初めては俺が全部いただく!誰にも渡さない』 瞬助はコウジの片手を取り、そっと手の甲へキスを落としながら、消えてしまった気持ちを言葉にする。 「え…」 「手作りチョコも、コウジに食べさせるのは俺が一番だから…」 「えぇ!まさか、そのためだけに作ったの!?」 「もちろん!」 「……」 瞬助の突拍子もない行動に、一瞬呆れるコウジだけれど… 不意にクスッと笑って… 「もう…瞬と付き合ってたら、ほんと、初めてのことだらけだよ」 そう、膝まづく瞬助の頬に付いているチョコレートをぺろっと舐めて、お礼にキスを贈る。 「コウジ…じゃ、これからもずっと、はじめては全部俺にくれるってことで…」 少し驚いた表情をする瞬助だけれど… コウジの髪を優しくなでて…言葉を続ける。 そして…そっと唇に口付けて… 「いいよな?」 男前な彼が…まっすぐ見つめ、そう囁く… 「うん…」 変なこだわりだな…と思いながらも… その真っ直ぐな瞳にドキっとして頷くコウジ。 「……」 その様子を瞳に捉え、嬉しそうに微笑む瞬助。

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