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2月3日の夜。-5
「……いか、ないで……」
ふにゃり……と力が抜けそうになる様な、舌っ足らずで高い声。童顔。クリッとした瞳は、小太郎のそれと瓜二つ。
よく見れば、髪型も髪色も、仕草までどことなく小太郎に似ている。
ネームプレートをチラリと見れば″キナコ″の文字。
「……グスッ……キナコ、まだ新人で……」
その瞳がみるみると涙で潤んでいく。
「どうしたらいいか……グスッ。わかんなくてぇ……」
「………」
小太郎に泣かれている様で……何だか落ち着かない。
「……キナコ、また先輩達に……怒られ……グスッ」
「わかった!……わかったって」
……いや、わかんねぇけど……
宥める様にして、再びソファへと腰を下ろす。
すると、突然キナコは掴んだままの俺の手を引っ張った。
「……けん、たろー………。ボクも、……ごほーし……グスッ……させて、くだしゃ、……」
頬を紅く染め、ふるふるとした柔らかそうな唇が緩く割れる。
そして蜜に濡れた様な赤い舌がちろりと現れ、俺の指先を柔らかく包む。
「……、んっ」
そうしながら、まるでキャンディでもしゃぶるかの様にはむっ、とし、指を咥内に含む。
「お、おい……」
柔らかい頬裏と舌上の粘膜。
爪で傷つけない様にゆっくりと指を折り曲げれば、それが刺激となってしまったらしく………
「……んふ、ぅ……っ、」
クチュ……と、卑猥な水音が小さくしたかと思うと、キナコが頬を赤く初め、涙で潤んだ大きな瞳を薄く閉じる。
その瞬間、俺の中心がズクンッと疼いた。
「……バッ、止めっ、」
慌てて手を引っ込めれば、無防備ながら恍惚とした瞳が俺を見上げる。
……小太郎……?
恐らく、酔いが回ったのかもしれない。
店内の薄暗さも手伝い、俺の目の前にいるのは小太郎だと、すっかり錯覚を起こしてしまっていた。
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