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双子&さとるん

「もー、理、ちゃんとライダーキックやってよ!」 「さとる~、ちゃんとしょくぱんキックして!」 「……」 俺は今、質屋で働いていた末期の頃と同じくらいの虚無顔をしている自信がある。 俺はなぜ、我が国が誇るヒーロー達の異種格闘戦の真ん中に立たされているのか。 「はいはい、ライダーキック」 「気持ちがこもってないよ!」 「さとるー、しょくぱんも、しょくぱんもー」 「しょくぱんキック」 「しょくぱんちだよう」 「さっきキックって言ったじゃないですか」 いや、これがまだ対象年齢通りのお子さま相手ならわかるし、本気も出してやれただろう。 だが、何が面白くて成人男性二人とソフビ人形で対戦をしなければならないのか。 「はー、理が本気出してくれないからつまんないな~」 え、俺のせいなの? 「さとる、やっぱあんぱんがよかった??」 いや、そういう問題じゃないから。 "のび"をしながらライダー人形を放り出したのが、ユーノさん。 チップのごとく俺のズボンにアンパン顔ヒーローのソフビ人形を無理矢理捩じ込もうとしているのが、ユウさん。 二人は、実年齢と頭の中味が噛み合っていない困った双子だ。 ユウさんだけでもめんどくさいのに、ユーノさんが追加されると二人で共鳴して更にめんどくさい。 というか、ユウさん、アンパンをねじこむのやめてくれないかな。絶対入らないし、痛いし。 「ま、でもライダーごっこ、たくさん付き合ってくれたし。 今度は理の好きなことしよう」 「さとる、エッチがすきだよ」 「よし、エッチしよ」 「なんでそうなるんですか!! というかナチュラルに仲間にいれないで下さい!」 「またまた~」 ユーノさんが目を細め、ペロリと舌なめずり。 そして、急に後ろから抱かれた。 ふんわりと柑橘系の爽やかな香りだ。 ここに来て最初の頃はバニラ系だったのに、さりげなく俺好みの香りに変えてきているのが地味に腹立つ。 「パートナーがアレで溜まってるんでしょ? オニイサンが遊んであげるよ」 「あー!ユーノくんずるい!ユウもー!」 「モチロン♪」 ユーノさんに重なるように、ユウさんが抱きついてくる。 「重たいので退いてください。 あとエッチはしません」 「えー、しようよー」 「はーい、今日はユウと理とおれで3Pしまーす」 「ちょっ、突然どこみて何喋っ……あっ!」 ユーノさんが"魅せ"角度で手を振っている先に、天井からカメラが生えているのが見えた。 お義父さん、いつの間にあんなところにカメラを追加したんだ……!! あとしっかり録画してる! 天井裏からにゅっと出てきたサムズアップ。 それはお義父さんの"ヤれ"のサインに他ならない。 質屋から助けてもらった手前、お義父さんには逆らえない。 うなだれる俺の首筋を、ユーノさんがぺろりと舐めた。 「ユーノくん、ずるい!ユウも~!」 「ユウはまずおれと。ベロ出して」 「んっ」 うう……。 後ろから濃厚なキスの音が響いてくる。 それをさっきよりも更なる虚無顔で聞き流す。 「んはっ」 「はは、ユウ、もう勃ってる。かわいー……」 いつもよりゆっくりした口調で、ユーノさんが言う。 「ん、ユウ、さとるとも、したい」 「いいよ」 よくない! と、言葉を発する前に、ユウさんに口を塞がれた。 少しざらついた厚めの舌が、強引に入ってくる。 ああもうどうにでもなれと、ユウさんの自分勝手なキスを受け入れると、突然後ろから伸びた手に胸を摘ままれた。 突然の刺激に、一瞬腰がはねあがる。 するとユーノさんがふっと耳に息を吹き掛け、 「理、乳首いじられるの、好きだよね?」 と囁いた。 「なっ、そんなこと」 それは……否定しきれないけれど、少なくともこの人の前でその素振りを見せたことは無い。 「この乳首見たら、すぐわかるよ。 ユウ、吸ってあげて」 「あい。ん~」 「あ、こら、ちょっ……!」 悔しい、けれど。 ユウさんが、ぬるぬるの舌で乳首を転がしつつ乳輪に吸い付く。 そうされると堪らない。 とはいえ、変な声を出すのは癪なので下唇を噛んで耐えた。 「ま、いいけどね」 それを見透かしているのだろう。 ユーノさんはそう言うと、ゆるゆるとズボン越しにペニスを擦ってくる。 「いー大きさ」 徐々に固くなっていくのを確認するように握りながら、またユーノさんが舌なめずりを音がする。 今日はこのまま二人に跨がられるのかと思った、その時。 「ユーノくん」 突然ユウさんが顔をあげてユーノさんの耳元でヒソヒソ話を始める。 「……うん? いいね、たのしそう。さすがユウ!」 「えへへ~」 「ちょっ、二人で決めるのはやめ……」 二人は勝手にくふくふと笑うと、件のカメラに向い、"せーの!"で揃って言う。 「みんなー、理はこれからニ本挿しにちょーせんしますっ!」 「……はあああ?!?!何勝手に……!」 瞬間沸騰で怒ろうとした……瞬間。 天井からにゅっとサムズアップが出てきたから、振り上げた拳の下ろしどころが解らなくなる。 2人の顔を見ると、まるでオモチャを見つけた子供みたいににんまりと笑っていた。 それはまさに、悪魔の笑みだ。 ★★ 「やあ、さとっピ、今日は"うちの子"の面倒を見てもらって悪かったね」 「……その呼び方やめてください」 夕方。 ドスケベ双子相手に数時間に及ぶ情事を経て、流石の俺もクタクタだ。 ユーノさんを迎えに来た誉先生を睨んだが、勿論彼はそんなことを気にするような人ではない。 うさんくさい笑みを顔に張り付けたまま、わざとらしく尋ねてくる。 「腰なんか押さえてどうしたの?」 「あのね、理、腰が立たなくなっちゃったんだよ。ね、ユウ」 「ユウ、そいつキライ」 「もー! ホマ、ごめんね。こいつヤキモチやいてんの」 「あはは、そうか。ごめんね、ユウくん」 「ちがうよ、ユーノくん、そいつにだまされてるよ」 「ユウ、ホマはすごいんだぞ! ホマに謝れ!」 「やだ」 「キライ!」 「こら、ユウ!!!」 「まあまあ、ユーノ。大きい声を出さないの。 俺は君にだけ好かれていたら、それでいいから」 「ホマ……先生……」 「テメエらうるせえな! てゆーかもう帰れよ!」 「カイさんも一緒に帰ってくださいよ。 ユウさんはともかくカイさんは不法滞在です。 望まれざる客です。いや客ですらない」 「おう、何だよ八つ当たりか??」 「やだあ、カイ、あいつといっちゃヤダア、うああん、さとるー!」 ああ、もう、地獄か。 ユーノさんに必要以上に優しくする誉先生を見てカイさんは苛立ってるし、ユウさんはそれを見て更にいじけているしで面倒臭い。 みんなまとめてどこか行ってくれないかな。 やかましい輩から目線を反らした先に、命くんとお義父さんが見えた。 「わあ、さとるくんのお尻メチャクチャ拡がってる~」 「今回の動画も当たる予感しかしないな」 「……」 これだけ人がいるリビングで音量を出して、さっきの動画編集とか無神経にも程がある。 「理、編集と画像処理やっといて」 「自分の情事のをやるって控えめに言って地獄なんですけど」 「そうか……?じゃあ仕方ない、翔に頼むか……」 「オトウサン、ゼヒヤラセテクダサイ」 はあ、この家に安らぎはないのか。 俺は痛む腰をさすり、傷ついた胸を押さえながら部屋の隅っこで丸くなる。 唯一の心の支えは、さっき"近くまで帰ってきている"とGPSアプリが知らせてくれた、パートナーである翔さんの帰宅だけだ。

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