11 / 11

発情うさぎさん

昼前から何となく身体が疼く感覚はあった。 しかしそれは、ここ3日ほど誉が襲ってこないせいかと思ってそのまま昼寝をした。 そしてひんやりとした下半身の違和感に目を覚まして確認してみたら、下着が濡れてベトベト。 まさかこの年で無精したかと焦った。 しかしよくよく見れば先走りだけだからセーフ!と、一瞬安堵したものの、いやいや冷静に考えたら全然セーフじゃない。むしろギリアウトだ。 ……というのが三十分前。 下着の始末をつけて、無駄に火照る体を冷ましたくてバルコニーに出、煙草に火を付ける。 大体2本も吸えばこういうのは収まるものなのだが、今回はダメ。全然ダメ。 むしろ時間の経過と共に疼きが強くなる感覚さえある。 オレはううっと唸ってバルコニーの手摺にもたれて項垂れた。 触らなくても完全にアソコが勃っているのがわかる。 下手をしたらまた下着をダメにしてしまうかもしれない。 1日に何枚も下着の洗濯物を出したら、また誉に何を言われるか。 まだ日は高い。 誉が帰って来るまで相当時間がかかる。 待つべきか。 いや、落ち着け。 何で誉に何とかしてもらう前提なんだよ。 そもそもこんな出来上がった状態がバレたらどんなに酷いことを言われ、そして何をされるか分からない。誉に知られないように、内密に処理するべきだ。 寝室に戻ったオレは、とりあえずベッドに身を投げだした。 昔、誉と別れたての時に一度だけ。 本当に一度だけ、自慰をしたことがある。 あの頃も今みたいに毎日誉にされていて、性行為が習慣になっていた。 それでどうしても我慢できなくなってしまってのことだったが、結局上手く出来ずに逆にしんどい思いをしたんだよな。 じゃあ今なら上手く出来るのかと問われると、やはり全く自信がない。 あの時のことがかなりトラウマになっている。 しかし困ったことに、もう体が疼きまくっていて耐えられそうにない。 恐る恐る下着に手を突っ込んで、勃ち上がったペニスを握る。ゆっくり擦ると、ビリビリとした感覚が走った。 先っぽがベタベタになっていることに気がついて、慌てて下着を脱ぐ。 横向きに寝直して、体をくの字にしながら今度は両手で擦ってみた。腰が重くなっていく。 気持ちいい。 それは間違いないのだがやはり足りない。 昔もそうだった。慣らされた後孔が疼くのだ。 ひくついているのが自分でも分かる。 更に乳首もピンと勃っている。 シャツと擦れるたび、甘い快感と共にもっと触ってほしいと訴えてくるようだ。 それでも、女のように自分で胸と孔を弄り快楽を得るのは大きな抵抗があった。 だからオレはしつこく雄を刺激し続けたが、駄目だ。身体の疼きだけが強くなるだけで、望む絶頂は一向に訪れない。 焦りだけ募る。しかし、ダメなものはダメ。 オレは手を離して深く息を吐いた。 まがりなりにもかなりいい年の成人男性だというのに、こんな事も上手く出来ない。 情けなさで胸がいっぱいになる。 だけど、そうだよ。 それもこれも、誉が何も知らない子供だったときからこんな身体に躾けたせいだ。 それはつまり。 「誉のせいだ」 だんだん腹が立ってきて、思わず声が出た。 「全部誉のせい!」 一度吐き出してしまうと、感情が収まらなくなってしまった。 だから、枕を向こうに投げつけて八つ当たりをする。それがクリーンヒットして床に積んでいた本の山が派手に崩れたが、知るもんか。 誉が悪いんだから、誉が片付ければいいんだ。 それでも気持ちと疼きは治まらず、ベッドの上の本も投げた。そして最後にペンギンのぬいぐるみを掴んでドアの方へと放り投げる。 すると、 「誰のせいだって?」 と、聞き慣れた声が聞こえたから、驚いて固まる。恐る恐る声がした方に視線を合わせると、そこに立っていたのは、眼前でペンギンをキャッチした誉だった。 「全く、またこんなに散らかして。悪い子だね」 誉はため息混じりにそう言いながら、こっちに歩み寄って来る。 オレは思わず後退ったが、残念ながら直ぐに壁に背が当たった。 「な、なんで、お前、帰……っ。 早すぎないか?」 「今日は出張先から直帰するから早く帰れるよって朝言ったでしょ。帰る前にもメールもしたよね。やっぱり聞いてなかったし、見てなかったね」 「う……」 誉はそう言ってベッドに腰を下ろして、まずはペンギンを丁寧に元の位置に戻した。 それから上着を脱いだ後、ゆっくりとオレの頭に手を伸ばしてくる。 避けようとしたが逃げ場がないので、仕方なくそれを受け入れた。 誉はその大きな手でオレの頭を撫でながら、 「俺が忙しくしていて、寂しかったんだね。 でも、もう大丈夫だよ」 と言って微笑んだ。 「なっ、ちげーし。子供扱いすんな」 「ほら、おいで」 「行かねえし」 「そう。じゃぁ俺が行くね」 「なっ、こっち来んな」 「はあ、カイをぎゅってすると落ち着く」 人の言うことなんて一つも聞かない誉は、遠慮なく身を乗り出してオレを抱き寄せてくる。 最初は抵抗しようとしたが、ワイシャツからこぼれた誉のにおいでストンと体から力が抜けてしまった。 続いて鼓動が早まって、体が熱くなる。 耳元にふっと息がかかると、背筋がゾクゾクするのと共に快感が走り抜けて行った。 「ほま、やだ……離れ」 力が抜けた手で誉の胸を押すが、ビクリともしない。 「ダーメ」 誉はそう甘く言うと、ちゅっと額に口づけてきた。そこからキスはどんどん降りてきて、狙い通りの唇へ。 「苦……、吸ったね?」 「わ、悪いかよ」 「もう、ちょっと構ってあげないとそうやってすぐ……。仕方ない、お口の中が甘くなるまでキスしよっか」 「なっ、や、んんっ」 誉の舌が直ぐに入ってきて、口の中を好き勝手に動き回る。 舌先が痺れると同時に、待ちわびた快感に腰がズンと重くなった。 舌が絡み合う度に、それだけで達しそうになる。 けれども、そんなの絶対嫌だから必死に堪えた。 しかし、ふわりと誉の手が後頭部を優しく撫でた、その瞬間。 「………ッ」 ビクビクっと体が大きく震えた。 「ふあ、あ……ッ」 待ちわびた射精は、いつもよりずっと長かった。 途中から体の力が全く入らなくなり、誉にしがみつきながらそれを吐き出す。 「おやおや」 誉は俺が落ち着くまで優しく腰の辺りを撫でてくれる。それが気持ち良すぎて、オレはヒクヒク震えながら吐精しきった。 やばい、ものすごく気持ちいい。 オレは深く息を吐いて、ずるりと誉にもたれかかる。 「ふふ。お顔がトロトロだねえ」 「そんなこと、ねえ、し」 「すっごく可愛い。大好きだよ」 誉はそう言いながら、変わらず頭をゆっくり撫でてくれる。 このにおいと、体温と、大きな手の感じと、包まれる安心感が本当に気持ちいい。 もっと欲しい、そう促す本能に従い舌をついと出すと、誉はその通りに優しいキスをくれた。 こんなやつと誰がするかという、理性と。 早くこの雄が欲しいという、本能と。 両者を戦わせるまでもなく答えは出てしまっている。 その首に腕を回してぎゅっと引き寄せる。 すると誉は息継ぎの合間にふっと息を吐いた。 そして何も言わずに俺を抱きしめ返し、ゆっくりベッドへと押し倒した。 もう、そうされたら待ち切れない。 はやく、はやくと息が弾む。 キスだけじゃ、もう我慢できない。 「ほま、はや、はやくぅ」 それは、自分でも驚くほど甘えた声だった。 「はいはい」 誉はクスリと笑い、サイドボードに手を伸ばす。 手探りしているのはローションか、ゴムか。 いや、でももう、そんなのどうでもいい。 誉の腰にも足を回して、尻をあげる。 ぎゅうぎゅうと押しつけると、会陰の所に確かに誉の固くなった雄が当たる。 「はぁ、ぁ…」 ビリビリっと体に電流が走った。 これだ、これが欲しい。 いますぐ欲しい、それなのに。 「ちゃんと慣らしてからね」 意地が悪い誉は、ため息混じりにそう言うとローションを俺の股間に垂らしていく。 「そーゆうのいいか、ら……っ」 「だーめ」 「んん、ゆび、うー…」 「中、すごく熱い」 やっと与えられた中への刺激に、一気に腰が重くなる。 「あー…」 「ふふ、気持ちいい?」 オレは言葉も出ず、ただ誉にしがみついて頷くことしか出来なかった。 誉の指、すごく気持ちいい。 でも、足りない。こんなんじゃ全然足りない。 「ほまれ、ほしいよ。も、がまん、やだぁ」 涙交じりに熱い視線を向けると、誉がその表情をふにゃりと緩ませた。 「全く、君って子は、ホントにもう。 可愛くて、愛しくてたまらないよ」 そして誉はそう言うと俺の足を割り開く。 ジッと響いたチャックを下ろす音に、ごくんと生唾を飲み込んだ。 誉の熱い雄が、ぬるぬると後孔を擦る。 3日ぶりの快感に内壁が期待してうねり、下腹のゾクゾクが止まらない それなのに、誉は後孔に押し付けるばかりでなかなか入ってきてくれない。 だから、オレは腰を押し上げる。 「ん、はいんないぃ」 「全く、がっつくから……。 焦っても挿入らないよ。 ほーら、痛くなっちゃうからやめて」 「やだ、ほしい、やだ」 「もう、仕方ないな。 じゃあほら、んーっていきんでごらん」 「うんん…、あ、はいっ……っ」 「そう、上手。お利口さんだね」 「きたぁ」 「うん、ちゃんと挿入ったねえ」 誉はうっとりとそう言うと、ゆっくり動き始めた。ぬるぬるの孔の中が擦れて、とんでもなく気持ちいい。 オレはヒクヒクと喉を鳴らしながら、誉の身体にしがみつく。 そうしていないと蕩けた体がバラバラになってしまいそうに思えたから、必死だった。 「あ、やぁ、そこっ」 「ここ好き?もっと?」 「うん、すき、そこすき、もっとぉ」 「はいはい、わかったよ」 「あぁ……っ」 ビュクとペニスからまた精子が溢れた。 「あ、あぅっ」 誉に揺らされるたび、それは愛液のようにトロトロとこぼれて、太ももを伝う。 殆どイキっぱなしだ、全然止まらない。 「あー、あ"、あ"っあ"っ」 「大きな声出てきたねえ」 すると次に、ぐんっと抉られるような衝撃があった。一番奥がこじ開けられる。 視界の端っこがチカチカと煌めいて、目の前がぼんやりしてきた。 このタイミングで誉が唇にキスを落としてきた。 上も下も深く交わる。 舌を絡み取られる心地よさに体が弛緩したタイミングで、誉は更に強く、深く俺を穿つ。 ごりゅ、と音がして誉が更に奥まで進入を果たした。ぎゅうと下腹部を押さえられると、そこがビクビクッと痙攣する。 「はぁ、あ……っ、あ"……っ」 「お腹押すと、中、ぎゅーって締まるなあ」 全く余裕がないオレとは正反対な誉が、呑気に呟く。 「ほら、ぎゅーっ。うん、気持ちいい」 「あ"、も、やめ」 「くせになっちゃうな、これ」 「やだぁ、腹、いやだ、ぐすっ」 「おや、泣いちゃった」 頬を伝う涙をペロリと舐め取り、誉は目を細める。 「泣いてるカイ、かーわいい。 もっと泣かせたくなっちゃうな」 「なっ、や、やめ……あっ、あーっ!!」 そのままグルンと反転させられ、今度はバックでズンと深く突かれる。 「あ、やあ……っ」 逃げようとしたけれど、誉の強い力と体からは逃れられない。やっと伸ばした指先は、ヘッドボードを掠め大きな手に捕らえられた。 引き寄せられ、上半身ごとベッドに押し付けられる。 そして腰だけを上げさせられた恥ずかしい姿で誉に容赦なく腰を打ち付けられるんだ。 膝なんかもうガクガクで、揺らされるたび落ちそうなのに、腰を掴まれて無理矢理起こされる。 ヒンヒン泣きながらベッドに頬を押し付け、もうよだれだか涙だかわからないべしょべしょのシーツを握りしめる。 そうしているうちに、中の誉がグンと大きくなった。 「いっ、あ、ああ……」 その瞬間、背中に痛みが走った。 きっと誉が噛みついたんだ。 それと同時にまたオレのペニスは精液を吐き出した。ヒリヒリする所に、ふっと誉の息がかかる。 最悪だ、こいつ笑ってやがる。 「ほら、カイ。もっとお尻上げて」 「も、むりぃ」 「奥に種付けしてあげるから、ね」 「おく……」 「そう、お腹じわーって気持ちよくなるよ。 ふふ、今お腹、ビクビクって痙攣させたね。 期待してる?」 「ん、おく……」 「欲しかったらお尻上げて」 「う"ー」 「上手だよ、お利口さんだね」 「尻叩くな…っ、あうう」 「おや、また射精したね。 痛いの好きなの?痛いの気持ちいい?」 気持ちよくない、痛いのは嫌だ。 嫌なのに、 「あっああ……っ」 びしゃ、びしゃと射精が止まらない。 後ろから強く抱きしめられる。 誉はグリグリと突き上げながら押し当て一番奥をこじ開けた。 「カイ、出すよ。受け止めてね」 「ぃあっ、また噛……っ。あ、ああ…」 うなじのあたりに鋭い痛みが走った次の瞬間、ぶわりと腹に熱いものが放たれる。 合わせて腹をさすられると気持ちよくて、気持ちよくて、もうたまらない。 「はあ、あ……」 オレが最後の大きく体を痙攣させ、全てを受け止めたのを確認して誉はふうと息をついた。 弛緩した体がぽすんとベッドに落ちる。 そして挿入した雄を抜くこともなく、ゆっくりオレの体を反転させると抱きしめてキスを落とした。 イった余韻でぼんやりしながら、オレはそれに応えた。その優しくて甘いキスは、蕩けるほどに気持ちいい。 そしてそうしているうちに、中の誉が再び熱と固さを取り戻した事に気がついた。 「お、まえ……」 「ふふ、君が可愛いから。もう一回、ね」 「あ、や……んん」 ゆっくり、ゆっくりまた誉が動き出す。 さっきとはまた正反対の優しい愛撫だ。 「やめっ。もう、しり、とける」 「うん、もっとトロトロになろうね」 「あ"、あん」 「あはは、今度は可愛い声。気持ちいいね」 耳元でそんな風に囁かれながらの甘いセックス二回戦目に、頭がもうどうにかなりそうだ。 もう抵抗する力も、気力も、理由もなく、オレは誉にしがみついた。 誉は満足気に頷くと、更にオレを深く貪るように愛し始めた。 ★ 結局、あのあと5回戦まで付き合わされてオレはへとへとだった。 ぐったりしたまま風呂に入れられた後、ソファーに横たわりながらご機嫌に鼻歌交じりで夕飯の用意をしている誉の背中を見ている。 いい香りがしてきた。 きっと今日の夕飯はオレが一番好きな野菜スープだ。 「あ、カイ。そういえばさ。 ダイニングに置いておいたキャンディ、食べた?」 「?、食べたけど」 誉がいつも置いてくれている禁煙用のキャンディだ。2つほどなめたが、結局気持ちが収まらずに煙草吸っちまったから全く意味なかったけど。 「あー」 誉はそう言うと、キッチンの火を止めてこちらを向いた。 「赤色と銀色、どっち食べた?」 「赤い方だけど?」 そして誉はキャンディが入った小さな籠を持ちこちらに来て、オレにそれを見せながら言う。 「これね、こっちの銀色の方が禁煙用。 この赤いのは媚薬なんだよねえ」 「え」 「全く、いつも食べてる方くらい覚えておいてよね」 「いや、いやいや。そもそも何で一緒に置いておくんだよ、おかしいだろ」 「うん、まあ、こうやっておくことで、もしかしたらウッカリさんなカイは間違えるかなっていう期待が全くなかったとは言い切れないね」 「確信犯じゃねえか!」 「あはは。ひろっぴが試供品てくれたんだけど、ホントよく効く媚薬だったよねえ」 「ばっ……、信じられねえ!」 「可愛かったよ」 「そういう問題じゃ、ねえ!」 「製品版買おうかな」 「絶対ヤメロ」 「ホラホラ、君の不注意なんだから怒らない、怒らない」 「普通一緒におかない!」 「普通、いつも食べてる飴を間違えない」 ぐぬぬっと喉を鳴らし、オレは誉を睨みつけた。 しかし誉はいつもの調子でにっこり笑っていうのだ。 「でも、とっても気持ちよかったでしょ。 可愛い発情うさぎさん」 そしてまさに言う通りだから、論破できるはずもなく。オレはただ恨めしげに誉を睨みながら見上げることしか出来なかった。

ともだちにシェアしよう!