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飴玉_02
橋沼さんから貰った優しさの詰まった飴。
それがあるだけで橋沼さんを感じられる、なんか、お守りみたいだな。
席に座ると葉月が咳で咽ていた。
そういえば朝からそんなだったな。席が近いから嫌でも聞こえる。
俺はポケットから飴を一つ取り出す。橋沼さんの優しさを分けてやるのは勿体ないが煩くされるのも迷惑だし、フルーツとミルクの味だから喉にも優しそうだしな。
「葉月」
と声を掛けると、一斉に二人が俺を睨みつける。それに応えず、
「受け取れ」
飴を投げ渡した。
「え?」
キャッチした手を広げ、それが飴だとわかると驚いた顔をする。
俺がこんな事をするとは思っていなかったのだろう。
「随分と可愛いの持ってんな」
俺が橋沼さんにいったセリフと同じことを口にする。
そう思うよな、やっぱり。
「咳、煩せぇんだよ」
労わる言葉などはない。迷惑だといわんばかりの台詞を吐き捨て視線をそらした。
今更、アイツにやさしい言葉をかけるのも互いに気持ちが悪いだけだろ。
「ありがとう」
俺と違って素直に言えるんだな、葉月は。強がって素直に慣れない俺とは大違いだ。
それにしても、まさか俺からこんなモノを貰うとは思わなかったようで、すげぇ間抜けな顔をしていた。
「ふっ」
思わず吹き出してしまう。久しぶりに教室で楽しい気持ちになれた。
ポケットの中の飴へと触れる。
橋沼さんと出逢ってから俺は救われているな。
クラスで浮いた存在になってしまってから、毎日がつまらなく、辛いものになった。
だけど猫が切っ掛けで、昼休みに橋沼さんとバカな話をしたりおかずを分けて貰ったりと楽しい時間を過ごせるようになった。
本当の友達になりたい。そんな風に思える人ができるなんて。神野やつるんでいたあいつ等とはなれなかったものだ。
気持ちを告げる事ができたなら、もっと近い存在になれる。そうなれたら良いなと、素直に思えた。
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