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二人で過ごす昼休み_06
残念だったなと、頭を乱暴に撫でてやった。
「ムカつく」
というと、田中がじっと俺を見つめていた。今度は何を思っているんだろう。
少しくらいは尊敬してくれたのかな?
「何?」
「いや、橋沼さんってモテそうだなって」
お、まじか。田中にそう言って貰えるとは。
「まぁ、否定はしない」
「うわっ、言うんじゃなかった」
引かれてしまった。
田中が身体を横に向けて弁当を食べ始め、俺は冗談だからと目の前にから揚げを差し出した。
から揚げは、ばぁちゃんの特製タレに漬け込んだ、食欲をそそる匂いがする。それで釣れない男はいない。
大きく口をひらき、一口でから揚げはなくなった。田中の横顔が美味いといっている。
俺の方へと身体を向け、
「お肉も頂戴」
と口を開いた。
可愛いな。まるでヒナに餌をやるみたいだ。その姿に口元が緩む。
「わかった」
生姜焼きを箸で掴み、口の中へといれる。
「うまい……。こってり味の生姜焼き」
頬に手を当て、表情を和らげた。
「男心をくすぐる弁当だからな」
と口角をあげる。ばぁちゃんの料理を美味いと食ってくれるのは嬉しい。
「優しいな、ばぁちゃん」
「あぁ。孫ラブだから」
親が居なくても寂しくないように、いつでも俺を優先にしてくれる。
じぃちゃんとばぁちゃんの話しをしても、つまらなそうな顔をしないのは冬弥と田中くらいだ。優しいといって、笑ってくれるのも、だ。
「田中って、チャラそうに見えるけど、笑うと可愛いのな」
「は、何言ってんの」
眉間にしわを寄せて睨まれる。
少し頬が赤いのは、照れている証拠だな。そういうところだよと、心の中で思いながら口元を綻ばす。
「てめぇ、オカズ食ってやる」
手を伸ばし肉団子をつかみ、それを口の中へいれると、再び表情を和らげた。
「あ……、美味い」
「ばぁちゃんに伝えておくよ」
よかった。田中が気に入ってくれて。
ばぁちゃんに、この事を話したら喜ぶだろうな。それで、明日はおかずを多めに入れて貰おう。
そうしたら、また、可愛い田中を見る事ができそうだ。
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