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二人で過ごす昼休み_07

 あれから、昼休みになると、美術室で田中と一緒に過ごすようになっていた。  多めにつくってもらったオカズを田中にお裾分けをし、味しいという表情を見ては満足する。  その後に、格闘技の事、ブニャの事、たまに授業の事などをしながら、俺はスケッチブックに絵を描く。  同じことの繰り返しなのに、その時間は待ち遠しく、そして楽しい時間だ。  弁当を手に、美術室へと向かおうと席を立つと、冬弥が俺を引き止めた。 「この頃、美術室へ行くのが楽しいみたいだな」  浮かれていると言われ、態度に出ていたかと、照れ笑いを浮かべる。 「実はさ、二年に知り合いができてな。一緒にご飯を食べているんだ」  美術部での一件があってから、冬弥には何でも話すようになっていた。  田中の事も、出会いから話し聞かせる。はじめの頃は楽しそうに聞いていたのに、徐々に表情が曇りだした。 「田中って、もしかして彰正(あきまさ)と同じクラスの奴か」  彰正とは冬弥の弟で、田中と同じ二年生だ。 「どうかな。クラスまでは聞いていないから」 「そうか。少し待ってろ」  と何処かにメールをし始める。すぐに返事がきて、そこに画像がはられていた。 「コイツ?」 「あぁ、彼だ」  そこにはつまらなそうな顔をした田中が写っていた。  教室ではこんな顔をしているのかと、その画像を見つめる。 「お前が楽しそうなのは嬉しいんだが、コイツだけは駄目だ」  という冬弥に、何を言っているんだと今度はそちらに顔を向ける。 「実はさ、二年の女子から聞いたんだけど、喧嘩をふっかけて、彰正の友達を停学にさせたんだって」 「なんだって」  冬弥が言うには、彰正君の友達に気にくわない子がいて、その相手に自分から喧嘩を吹っかけたというのに、負けた腹いせに先生に告げ口をして、停学に追い込んだらしい。 「そんな事があったのか」 「あぁ。だからさ、お前に何かあったらと思うと」 「ありがとう、だけど大丈夫だ」  その話が真実だとしても、俺が知っている限りでは悪い奴には思えないんだ。 「総一っ」 「冬弥、この件はこれでおわりな」  と、これ以上は言うなとくぎを刺す。ごめん、冬弥。心配してくれているのに。だけど、直感を信じたい。  

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