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謝罪と抱擁_06

 美術室のドアを開けると、橋沼さんが俺を出迎えるように手を広げて、その胸におもいきり飛び込むと、しっかりと受け止めてくれた。 「猪突猛進だなぁ」  何を言っているか意味がわかんねぇけど、謝ることができた事が嬉しくて、それを伝えたくて興奮していた。 「言えたよ、橋沼さん!」 「あぁ。よかったな」  大きな手が俺の頭を撫でる。  これだ、俺はこうしてほしかったんだ。  嬉しいときや悲しいとき、傍にいて慰めたり勇気つけたり、抱きしめたり、頭を撫でたり……、ずっとこうしていけたらいい。 「橋沼さんが居るから勇気がもてた。俺と友達になってくれないか?」  もう一つの方も言えた。ずっと橋本さんに伝えたかったことだ。 「なんだ、田中と俺は友達じゃなかったんだ」 「へ」  そっか、そう思っていてくれたんだ。  どうしよう、顔がにやけるぞ。 「そうだな、じゃぁ、互いに下の名前で呼び合うか」  俺もこれからは田中ではなく秀次と呼ばせてもらうからと言われ、一気にテンションが上がる。 「いいのか?」  名前呼びだと友達感が増すよな。なんか、こういうの久しぶりで照れるやら嬉しいやらで、口元が緩む。 「あぁ。ほら、呼んでみろ。総一センパイって」  語尾にハートをつけろよと言われ、流石に少し引いた。  それ、俺が言ったらただキモイだけじゃん。何を考えているんだと総一さんにジト目を向けた。 「可愛く言えよ」  これは……、完全に遊んでるな、このやろう。 「総一先輩、はぁと」  いわれたとおりにしたら、あまりにキモくて自分にまでダメージがかえってきた。  橋沼さん改め、総一さんは口元を手で押さえて震えている。絶対、笑ってやがる。  くそ恥ずかしいじゃねぇか。 「笑ってんなよ。リクエストにこたえてやったのに」 「ありがとうな、秀次」  目尻を下げて俺を見ている。なんか、橋本さんがブニャにデレてる時に見せる表情だな。  まさかな、そんなわけは……、て、え、なんでキスしてんの、俺に!  柔らかい感触と熱が微かに残る、その箇所へ手を当てて呆然とする。 「おま、あれ」  なんで、意味がわかんねぇよ。  パニくる俺に、 「懐かないにゃんこが甘えてきたから、つい、な」  と総一さんが言う。  あぁ、なんだ、そういうことか。猫扱いね、俺は。 「はぁ、俺だからいいものを。他の人だと勘違いされるぞ」 「そうだな。こういうことは秀次だけにする」  いや、俺だけって、できれば勘弁してほしい。胸がざわざわとして落ち着かない。 「駄目か?」  怒られた犬のようにしゅんとする総一さんに、駄目だなんて言えないっ。 「わかったよ」  と言うと、表情が明るくなる。  驚いたけれど別に嫌じゃなかった。相手が総一さんだからだろうな。  それにしても、意外とスキンシップが激しいのな。俺だけとか言っていたけれど、なんだか胸がもやもやとした。

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