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友達+α(総)

 絵を切り裂かれたあの日から、部活には出ていなかった。  誰も何も言わない。俺が部活に参加したいと思うその日まで待ってくれているが、本当にそれでいいのかと、プレッシャーに感じる時もあった。  しかも、今は副部長である三芳に部活の事を全て任せきりになっていた。 「三芳、そろそろ復帰するよ」  彼女のクラスへ向かい、廊下へと呼び出して告げた。 「やっと出てくる気になったか。後、一週間遅かったら部員総出で美術室へ拉致する所だったわよ」  と笑う。美人で姉御肌、そんな彼女らしい言葉だった。 「やりかねないな」 「当たり前。でも、その前に戻る気になって良かったわ。先生にも話しておいて」  宜しくね、部長。そういうと三芳は教室へと戻った。  その後、職員室へと向かい先生に告げると、優しい目をしながら、そうかと俺を励ますように腕を軽く叩いた。  美術室の鍵はもうしばらくだけ借りた。田中ともっと仲良くなるには、あの場所が必要だから。  田中とは冬弥のようになんでも話せる間柄になりたいと思っている。  どうしてだろうな、はじめて会ったあの日から、田中に対しては他の人とは違う何かを感じていた。  スマホで時間を確認すると、十分ほどたっていた。  田中の奴、お腹を空かせて待っているだろうな。弁当を抱え口元が綻ぶ。  ばぁちゃんに田中の事を話してから、弁当箱が重箱にかわった。  肉中心なのは変わらないが、ばぁちゃん曰く、野菜を使ったハイカラなおかずもプラスsれている。  毎日、楽しそうにタブレットで料理のレシピを見ている。これも田中と知り合ったお蔭だなと、美術室へと向かう。  だが、そこで待っていたのは田中ではなく冬弥だった。  何か用事があって遅れるのだろうか。こんなことなら連絡先を交換しておくべきだったな。  ここに来れば会えるからと、今まで聞かずにいた。 「冬弥、お前もここで食べ……」 「田中は来ないぞ」  俺の話をさえぎるよに冬弥が言う。 「どうしてだ?」  もしも冬弥に伝言を頼んだなら、ラインで知らせてくれるだろう。スマホを確認するが誰からの連絡もない。  じゃぁ、どうして冬弥は俺を待っていて、その事を告げたんだ。  ひとつ思い当たる事があり、その瞬間、怒りがわき、 「冬弥、お前、田中に何を言った!」  冬弥の胸倉をつかんでいた。 「総一が悪いんだよ」  冬弥の目の端に涙が浮かんでいて、俺は手をゆっくりと下ろした。 「言ったよな。大丈夫だって」  田中は俺を傷つけるような事はしない。  スケッチブックを奪い取ろうとしたことがあったが、その時も素直に謝ってきたのだから。

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