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友達+α_02

 今の田中なら、同じことを繰り返したりしない、俺はそう思っている。 「だけどさ、もしも、なにかあったらと思うと、俺はっ」  辛いよと、顔を机に伏せた。 「ごめん。冬弥は心配してくれただけなのにな」  本当にやさしい奴だな、冬弥は。 「そうだよ」 「だけど、俺は、田中を信じている」  それはけして揺るがない。 「わかった。もう何も言わない」  冬弥は、はじめから俺の出す答えを解っていた。それでも、俺の為に何度も言ってくれた。 「いい友達を持ったよ、俺は。ありがとうな、冬弥」  と髪を撫でれば、早く行けとその手を払い除け、美術室を追い出された。  田中はたぶんあそこにいるだろう。  俺とはじめて会った場所だ。 「ぶにゃぁ」  ブニャの鳴き声が聞こえる。  しゃがみこんでブニャに顔を埋める田中の姿がある。 「田中」  俺が居る事に気が付いている。だけど顔をあげてくれない。 「美術室で話しをしよう」  それに対しての答えはノーだった。  俺が知ってしまったから、このままでは田中は俺から離れていってしまう。それだけは嫌だった。 「よし、選ばせてやる。美術室にいくか、恥ずかし固めをくらうか」  名前の通り、股を開かされた体勢でホールドされる、掛けられた相手は辱めをうけるわけだ。 「なんだよ、それ……」  田中ならどんな技かわかる。故に嫌そうに眉をしかめた。 「股、開きたいのか?」 「嫌に決まってんだろ」  俺は本気でやる気だった。田中はそれを感じ取ったようで、大人しくしている。 「それなら来い」  と腕を掴むと、素直に引かれるままついてきたが、美術室の中へと入るなり、手をふりはらわれてしまった。 「なぁ、知っていたんだろ、俺がした事を。それなのに、どうして」  田中と一緒に居たかと、そう聞きたいんだろう?  不安げに揺れる目は、この後に続く言葉を聞くのが怖いといっている。  それで俺が軽蔑するとでも思ったのか? あまくみるな。 「俺は今の田中としか付き合いがないんだぞ? 誰かに酷い事をした話をされてもなぁ、嫌いになれない」  田中が深く息を吐きだし、しゃがみ込んだ。その目には涙が浮かんでいる。 「泣くなよ」  と、その言葉で涙に気が付いたか、自分の頬に触れた。 「え? 泣いてねぇし」 「俺の前では強がらなくていい」  田中が涙を拭う。俺はしゃがみ込んで、その背に腕を回した。

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