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友達+α_06

 田中が謝罪を終えて、ここに来るまで待っていよう。  そう思っていたのに、落ち着かなくて、結局はベランダに出てきてしまった。  うまくいっているのかどうか、下を覗き込めば、魔王とか王子とか聞こえてきて、険悪そうには見えない。  よし、声を掛けても大丈夫そうだな。 「おーい、田中、仲直りできたかー」  すると、三人がいっせいに上を向く。 「うるせぇ」  と返され、その後、三人で話をはじめる。  その姿を見ているうちに、なんだか寂しい気持ちになってくる。  あぁ、田中の事を抱きしめて頭を撫でてやりたい。  後は中で待っていよう。  走ってくる音が聞こえる。  お前も俺に会いたいと思ったのか?   手を広げて田中を待つと、ドアが開いて胸めがけて一直線に飛び込んできた。  その瞬間、胸が高鳴った。 「猪突猛進だなぁ」 「言えたよ、橋沼さん!」  余程に嬉しかったのだろう。興奮して鼻息は荒いし頬が真っ赤だ。 「あぁ。よかったな」  まるで小さな子供みたいだ。よく言えたなと褒めるように頭を撫でた。  すると、嬉しそうに眼を細めて口元を綻ばす。  可愛いな、こういう顔を見たかったんだ、俺は。  すると何か言いたそうに、でも言いにくいのか、じっと俺を見ている。  俺は田中が言いたい何かを口にするまで待っていると、やっと口を開いた。 「橋沼さんが居るから勇気がもてた。あの、俺と友達になってくれないか?」  そう言われた。  俺はすでに友達だと思っていたが、田中の方はそうじゃなかったんだな。  例の事もあるし、完全には俺の懐へと踏み込んではこなかった。  だけど、一先ずケリがつた。だから一歩を踏み出した、そんなところだろう。  じわっと胸が熱くなる。本当、たまらないな。 「なんだ、田中と俺は友達じゃなかったんだ」 「へ」  俺の言葉に、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。  良い反応だ。それならもっと仲良くなれるように、 「そうだな、じゃぁ、互いに下の名前で呼び合うか」  俺もこれからは田中ではなく秀次と呼ばせてもらうからと言うと、 「いいのか?」  秀次は嬉しそうな表情を浮かべた。

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