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告白_02
中に入ろうとせずに、ドアの前で見つめ合っている俺達。はたから見たら怪しいよな、これ。
総一さんも何事かと思ったんだろう。どうしたんだと声を掛けられる。
「自動販売機の所で会ってな」
「そうなんだ。冬弥も一緒に飯食う?」
入れよと親指で席を指す総一さん。だけど尾沢兄は教室に戻ると言って、
「またな、田中」
と肩を軽く叩かれ、俺らから背を向けて教室へと戻った。
「随分と仲良くなったな」
「あ……、うん」
あのやり取りは秘密にしておた方がいいだろう。
そう思って何も言わなかったら、何故か総一さんがムッとしている。もしかして怒ってる?
「見つめ合うほど仲良しになったんだなぁ」
あぁ、そう言う事か。大切な友達を俺にとられたと思っているんだな。
なんか小さい子供みたくて可愛いな。
「大丈夫。総一さんが一番だから」
大体、尾沢兄は俺のことなんて好きじゃねぇもん。だからそう口にしたら、目をパチパチとさせて俺を見ていた。
そうなの? とまるで聞かれているかのよにかんじて、その表情が可愛くて思わず頭を撫でてしまった。
するとふるっと頭を振られ、嫌だったかなと、あわてて手を離した。
「わるい」
「嫌じゃない。もっと撫でてくれ」
首のあたりに顔をおしつけ、スンスンと鼻を鳴らす。
まるで犬みたいだなと包み込むように腕を回して頭を撫でる。
「よい匂いだな」
「あ……、香り付け専用ビーズの匂いじゃねぇかな」
母親が、親父が会社で若い娘さんたちに臭いといわれないようにと使っている。お蔭で俺の洗濯物まで女が好きそうな匂いがする。
「そうなんだ」
鼻の感触が上へ上へとあがっていく。今、耳の当たりを嗅がれていて、それがくすぐったい。
「ちょっと、総一さん」
「シャンプーは?」
「姉貴の……、んっ」
耳に息がかかり、ゾクゾクっと身体がしびれた。
「いい加減に」
と総一さんの方へと顔を向ければ、その近さに驚いて目を見開く。
「え?」
触れる。
そう思った瞬間、俺達はキスをしていた。
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