32 / 72
告白_04
気持ちがソワソワとしていて落ち着かない。
だって、俺のどこが良くて惚れたんだよ。見た目は普通だし、中身は自分で言うのもなんだけど最低だぞ?
一人で抱えていると混乱するだけだし、誰かに相談した。だけど、話せる友達はいねぇし、この手の知り合いもいない。
あ、一人だけ相談できそうなやつが……。
「いや、アイツはないわ」
思い浮かんだ相手に、あり得ないと首を横に振るうが、俺にはアイツしかいない。
でも、連絡しようにも尾沢兄の番号知らねぇしなって、あ、そうだ、連絡先を知っている奴が一人いるんだった。
俺は立ち上がり尾沢の席へと向かう。
「尾沢、ちょっといいか?」
「なんだ」
次の授業の用意をしている所に話しかける。流石、委員長だけあって真面目だな。
「頼みがあるだけどさ、兄貴に俺が会いたがっているとメールをしてくれないか?」
「良いけれど、本当に兄貴と知り合いなんだな。どうりで田中の事を聞かれる訳だ」
葉月の事は女子から聞いたと話していたが、弟にも俺の事を聞いているじゃねぇか。
「何を聞かれた?」
学力は後ろから数えた方が早いし、クラスでは浮いている存在。いい所なんて何もない俺の何を知りたいんだよ、あの人は。
「今まで付き合った女性のことを」
「はぁ?」
それを知ってどうする。まさかそれを総一さんに伝える気か。
そんな事をされたら、嫉妬をして、キスをされるんじゃ……!
唇の感触。とろけそうな気持ち良さを思いだして、頬が熱くなる。俺はそれを隠すようにお頭を抱えてしゃがみこむ。
「田中、どうした」
「尾沢、ごめん。キャンセル」
駄目だ、あの人に話をしたら。面白がるにきまっている。
「別にかまわないが、大丈夫か?」
尾沢の手が俺の肩に触れる。
その時、尾沢のスマホからバイブ音が聞こえ、
「あ、兄貴からだ」
と呟いた。
タイミングがいいなぁ、尾沢兄!
「田中、これ」
スマホの画面を俺の方へと向ける。そこには田中へと書かれた文字と可愛い動物のキャラクターが、ムフフと笑うスタンプが貼りつけてある。
「ムカつく」
総一さんから聞いたんだな。くそ、会ったら、スタンプと同じような顔をするんだろうな。
「兄貴と何かあったのか?」
何か嫌な事をされたかと、俺を心配してくれる。
「あ、うん、色々な」
「そうか。もしもの時は俺に言え。半殺しにしてやるから」
「お、おおぅ」
なんか、心強いわ。
その時は素直に頼るとしよう。ありがとうと言い、俺は席へと戻った。
ともだちにシェアしよう!