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告白_05
ポケットからスマホを取り出して、同じような体験をしている人はいないかと検索しようとしたら、ラインの通知がはいる。
総一さんからで、放課後にデートをしようというお誘いだった。
友達になってほしいと言った時に、連絡先を交換した。ラインはしていたが、部活の無い日にどこかに寄ったりとか、休みに遊ぶとか、そういう約束はしたことが無かった。
遠慮していた部分もある。やっぱりさ、俺よりも先に友達になった人がいるわけだし、昼休みを一緒に過ごせるだけでありがたいというか、そんな感じ。
まぁ、総一さんの方も俺を誘うような事は無く、だからそうしてきたのだが、告ってからはガンガン行くって方向か?
「はぁぁぁ、どうしよう」
それで悩んでいたっていうのに。
頭を抱える俺に、コツンと何かが当たり、机の上に転がった。
「何しやがる」
人が悩んでいる時に。
それが飛んできた方向へとガンを飛ばすと、視線の先に葉月と神野の姿がある。
「さっきから煩い」
と今度は額に何かが当たり、掌に落ちた。飴玉が二つ。いちごとメロン味だ。
「なんだよ、女子から貰ったのか」
相変わらずもてるなと飴を握りしめる。
「そうだ。ありがたく食え」
と神野が俺に言う。謝った時に本当の彼を知った。それからというもの、俺に対してぞんざいな扱いをするようになった。
「ありがたく頂戴いたします」
飴を掌にのせ、高く持ち上げて頭を下げる。
総一さんに貰った時と同じ、優しさがつまった飴だ。乱暴に渡されたが、悩んでいる俺を見かねてくれたのだろう。
口の中に入れれば、甘さが広がっていく。なんだかほっとする。
じたばたしても仕方がねぇよな。
今は同じ好きでなくとも、これから先、どうなるかなんてわからないし、こたえが必要になる時がくるかもしれない。
結果がどうなろうとも、総一さんと一緒にいたい。その気持ちは嘘じゃない。
「落ち着いたか?」
葉月が俺に声を掛ける。その声に気遣うような優しさを感じて驚いた。
謝ったから全てを水に流すなんてできないだろうに、それでも、声を掛けてくれたんだ。
「あぁ、落ち着いた。ありがとうな」
「そうか」
と、再び二人で話を始める。
短いやりとりだが、飴と言葉で心がじわりと暖かくなった。
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