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放課後デート_02

「それでだ。秀次、モデルをしてくれないか?」 「え、俺?」  総一さんの手助けができるなら嬉しいけれど、俺なんかでいいのか。 「秀次の事を描きたいんだ」 「それこそ冬弥さんの方が絵になるんじゃ……」 「お前の身体、理想的なんだ」  そっと首を撫でられてゾクゾクときた。 「総一、セクハラしていないで買っといでよ」  痛みから復活した冬弥さんが俺と総一さんの間に入る。  やばかった。前に絵を描いていた時に見せた、射抜くような目をしていた。 「そうだな。行ってくる」 「おう。ここで待ってるわ」  冬弥さんが間に入ってくれなかったら、俺、どうされていたんだろう 「本気になると周りが見えなくなるんだから」  やっぱり、危険だった!?  ニィと意味ありげに口角をあげる冬弥さんに、俺は無事でよかったと安堵する。 「なぁ、総一に協力してやってくれないか」  俺でいいのか、本当に。  冬弥さんは俺が思っている事に気が付いたようで、大丈夫と背中を強く叩かれた。 「アイツが求めているのはお前なの。だから自信を持て」  頼んだぞと念を押された。  総一さんが、俺がいいと言ってくれるなら協力は惜しまない。 「わかった」  会計を済ませて戻ってきた総一さんに、モデルを引き受けると告げると嬉しそうな顔をした。  詳しくは明日と言われ、画材店を後にする。  画材を持ったままデートの続きという訳にはいかず、今日はここでおしまいとなる。 「今日は付き合ってくれてありがとう」 「あぁ。また明日な」 「今度は二人きりで、デートしよう」  デートじゃなくて遊ぶ約束な。  そう口にしようとしたが、まぁ、いいか。  顔をあげれば、頬に唇が触れ、驚く俺の髪を撫でて、じゃぁなと手を振った。  ここ、外! 人が居るのに何してんだアンタはっ。  男同士で頬にキスとか、誰かに見られたらと思うと怖くならないのか?  しかも、いたたまれない思いをするのは俺だけで、総一さんは気にならなそうだわ。 「ま、頑張れよ」  見てたよな、冬弥さん。何故、とめないんだよ。  にやりと笑い総一さんの後に続く。  残された俺だけが焦っていて、叫びだしたいのをぐっとこらえながら走ってその場を後にした。  まったく。総一さんは俺の心を簡単に乱してくれる。  家に帰った後も、ラインで可愛い猫のキス顔が送られてきた。  本当、攻めてくるなぁ。  この頃、こう、甘酸っぱい系のものはなかったからさ、俺、彼女がいたときってどんなだったんだろう。  相手に押されっぱなしで、自分のペースにもっていけないなんて。まるで、恋愛に慣れてない奴みたいにまごついて、だせぇよな。    

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